睡眠時無呼吸症候群の治療方法は?自分でできる対処法も紹介
目次
【2023年12月26日更新】
しっかりと寝ているはずなのに日中眠気に襲われる、朝起きた際に頭が痛いという場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、早期治療をしなければ重い病気を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
そこで、睡眠時無呼吸症候群の治療方法と、自宅でもできる対策について紹介します。
いびきメディカルクリニックのいびきの治療ページはこちら
睡眠時無呼吸症候群とは?主な症状
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に何回も呼吸が止まる状態(睡眠時無呼吸)を繰り返す病気で、SASとも呼ばれます。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
いびきだけではなく、次のような症状が起こります。
- 十分な睡眠がとれない
- 夜中に突然目が覚める
- 起きた時に頭が痛い
- 昼間強い眠気に襲われる
さらに、高血圧や不整脈などの循環器系や呼吸器系の病気と合併症を起こすケースも少なくありません。
加えて昼間強い眠気に襲われる症状から、車を運転する場合には居眠り運転による事故を起こしやすいため、治療しないと命に関わることもあるのです。
睡眠時無呼吸症候群は検査をしたうえで、患者さんに適した治療を行う必要があります。
睡眠時無呼吸のメカニズム
睡眠時無呼吸の症状は、空気を通る気道が全て塞がれる、もしくは部分的に塞がれることによって生じます。
そのため、睡眠時無呼吸の症状が出やすい人は肥満体型や首が短い、顎が小さいなどの特徴を持っていることが多いです。
睡眠中は咽頭の筋肉や、筋肉の塊である舌が緩み、気道が狭くなりやすい状態になります。
加えて肥満体型や首が短い、顎が小さいなどの特徴がある場合、元から気道が狭い構造であることが多く、気道が塞がりやすいのです。
気道の狭い構造の人が睡眠中の気道が狭くなった状態で息をすると、肺の陰圧で気道がさらに狭まり閉じてしまいます。そして呼吸ができなくなるというのが睡眠時無呼吸のしくみです。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の原因を、もう少し詳しく見てみましょう。
睡眠時無呼吸症候群の原因は多岐にわたり、例えば次のようなものがあります。
- 肥満
- 骨格
- 睡眠中の姿勢
- 中枢性の異常
肥満と骨格については、「睡眠時無呼吸のメカニズム」で解説した通りです。
睡眠中の姿勢
「睡眠中の姿勢」は、比較的改善しやすい原因です。仰向けに寝ることで舌の根が喉の奥に落ち込み、気道が塞がれ、睡眠時無呼吸症候群が起こるので、これを改善できれば、睡眠時無呼吸症候群のリスクも減少します。
中枢性の異常
中枢性の異常による睡眠時無呼吸症候群は、脳からの「呼吸しなさい」という指令が通らなくなることで起こります。解明されていないことが多く、また発症の確率が全体の数%と低いのが特徴です。心臓疾患や機能低下を見られる方に多いとされています。
睡眠時無呼吸症候群の原因について、さらに詳しく知りたい方は下記のコラムをご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群は治療するべきか?
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状が、多くの人にとって馴染みのあるいびきであるためか、「治療をするほど深刻な病気ではないんじゃないか?」と考えている患者さんは少なくありません。
しかし、医療機関で睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、適切な治療を受けるべきです。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると命に関わる恐れが
睡眠時無呼吸症候群は、悪化することで頭痛や倦怠感に悩まされる、日中に強烈な眠気に襲われるなど、日常生活に様々な支障をきたします。
それだけではなく、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞など、命に関わる合併症を引き起こす恐れもあります。
こうした事態を避けるため、睡眠時無呼吸症候群の疑いができる限り早めに医療機関にて、診断をしてもらいましょう。そして睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、必ず適切な治療を受けてください。
睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされるトラブルについて、詳細は下記のコラムをご覧ください。
医療機関で睡眠時無呼吸症候群を治療する場合の流れ
睡眠時無呼吸症候群の治療方法は、原因や重症度によって異なりますが、治療の流れはほとんど同じです。
一般的に、医療機関で睡眠時無呼吸症候群を治療する場合の流れは以下の通りになります。
問診
最初に行われるのは、エプワース眠気尺度(ESS)問診票を用いた問診です。
日常生活において、特定の状況下で感じる眠気の程度を回答し、全項目の合計点をもとに、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかを調べます。
■エプワース眠気尺度(ESS)問診票の例
状況 | 眠くなることが多い | 時々眠くなる | まれに眠くなる | 決して眠くならない |
1.座って読書をしている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
2.テレビを見ている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
3.会議中など、人が大勢いる時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
4.乗客として1時間以上、休憩なしで乗っている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
5.午後に横になって休憩している時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
6.座って人と話している時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
7.飲酒をせずに昼食をとった後、静かに座っている時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
8.自動車を運転中、信号や渋滞で数分間止まった時 | 3 | 2 | 1 | 0 |
検査
エプワース眠気尺度(ESS)問診票の回答による合計点数が11点以上の場合、日中の眠気が強いと判断され、検査を受けるケースが多いです。
検査では、一般的に睡眠時無呼吸症候群の次の2種類が用いられます。
簡易検査(アプノモニター)
簡易検査は、「アプノモニター」と呼ばれる装置を自宅へ持ち帰り、1晩〜2晩、就寝時に装着することで、無呼吸の回数、低呼吸の回数、血中酸素濃度、いびきの状態などを調べます。
簡易検査の結果、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の合計回数を示す「AHI」の指標が40を超えている場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されることが多く、保険適用の治療へと進むのが一般的な流れです。
なお、AHIが40未満の場合はより詳しい診断のため、精密検査が行われます。
AHIについて、詳細は下記のコラムをご覧ください。
精密検査(ポリソムノグラフィー)
アプノモニターを使った簡易検査でAHIの指標が40未満だった場合に行われる精密検査は、ポリソムノグラフィー(PSG)とも呼ばれます。
医療機関に入院し、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、いびきの回数、無呼吸の有無と度合い、低呼吸の有無と度合いなどの項目を調べます。
精密検査の結果、AHIの数値によって睡眠時無呼吸症候群の重症度が判断され、AHI20以上の場合は保険適用の治療へ進むのが一般的です。
睡眠時無呼吸症候群の診断方法(検査方法)や重症度について、さらに詳しく知りたい方は下記のコラムをご覧ください。
治療
検査が終わったら、結果に応じて適切な治療が施されます。
比較的軽度の睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の改善で治療が可能であることから、CPAP療法などではなく、医師による生活上のアドバイスやマウスピースの装着により、治療を試みます。
生活習慣の改善だけでは厳しい場合に行われるのが、「睡眠時無呼吸症候群の治療法」で挙げたような治療です。
効果があらわれるまでの期間については、例えばCPAP療法であれば入院して治療を始めた日から数日後には、無呼吸や低呼吸、いびきがなくなり、睡眠の質が改善されます。
経過観察・ケア
ある程度症状が改善された後は経過観察になりますが、場合によっては自宅でもCPAP治療を続けることがあります。
また、症状がなくなった後も医療機関によっては、定期的な通院をすることで、治療後のケアを行います。
いずれにしても睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣との関連が深い病気であるため、症状が改善されても生活習慣には気をつけて過ごさなければなりません。
睡眠時無呼吸症候群の治療が終わった後も、「睡眠時無呼吸症候群の対処方法」で紹介した生活習慣の内容を参考に、再発を防げるような生活を送りましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の予防をしたい場合や診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の治療で取り入れられる治療や、自宅でできる改善方法について紹介します。
減量
OSAS患者の中でも過体重や肥満症状が見られる人には、食事管理や運動療法、薬物療法を用いた減量が行われます。
減量は、心血管疾患や代謝疾患、喉に溜まっている脂肪による気道の狭窄が改善され、睡眠時無呼吸症候群の症状を解消できる可能性がある治療法です。
就寝前の禁酒
アルコールを摂取することによって気道の筋力が低下します。
気道の筋肉が緩み、気道が通常の睡眠よりも狭くなるため睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させてしまいます。
特に、寝る前にアルコールを摂取しないように注意しましょう。
禁煙
タバコの煙によって気道や喉に炎症や腫張が起こり、腫れることで気道が狭くなってしまいます。
タバコは無呼吸の症状を悪化させます。睡眠時無呼吸症候群を改善するためには禁煙を推奨します。
運動療法
運動療法では、ジョギングやウォーキング、水泳などの有酸素運動が取り入れられます。
治療をすることで体重管理がされ、無呼吸の改善や慢性疾患のリスク減少が期待できます。
上気道手術
上下の顎骨を骨切りし、前方へ移動させる手術です。
重度のOSASや下顎欠損が見られる場合に行われる治療で、上気道が拡張されるため気道の虚脱が解消されます。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術
扁桃肥大やアデノイド肥大などの症状が見られる場合は、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術で原因を一部除去することがあります。
症状の大幅改善が期待できる外科手術ですが、声の変化や術後の痛み、鼻逆流などのリスクも伴います。
切除するレーザー治療
従来のレーザー治療は切除を伴います。「口蓋垂」や「軟口蓋」をレーザーで切り広げ縫合し、粘膜の膨らみを取り除く手術を行います。切開手術で気道を切り広げる場合、術後の数週間は食べ物が飲み込みにくく、強い痛みを伴ったり、異物感を感じたりなど、長いダウンタイムがあります。
非切除のレーザー治療
最新のレーザー治療です。メスで体を傷つけることがないため、負担が軽減されることがメリットです。
いびきメディカルクリニックで扱う非切除のレーザー治療「パルスサーミア」は表面を蒸散させずにさらに深層部へアプローチするため、喉を切除する治療とは異なり、痛みがほぼなくダウンタイムが短いため、日常生活に大きな支障が出ないことが特徴です。
薬物治療
薬物療法では、原因に合わせて異なる投薬がされます。
主な4つの原因に使用される薬について見ていきましょう。
解剖学的要因に対する薬物治療
- 肥満:セロトニン、ノルエピネフリン再吸収阻害薬「 sibutramine」、GLP-1 受容体作動薬「リラグリチド」
- 心不全や浮腫:アルドステロン拮抗薬、スピロノラクトン、利尿薬
- 鼻閉:霧ステロイド薬や点鼻用血管収縮薬の併用
上気道開大筋群(とくにオトガイ舌筋)虚脱に対する薬物治療
- 選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「トモキセチン」
- ムスカリン受容体拮抗薬「オキシブチニン」
呼吸調節系の不安定性に対する薬物治療
- 炭酸脱水素阻害薬「アセタゾラミド」
- 睡眠薬、鎮静剤
低い覚醒閾値に対する薬物治療
- 睡眠薬
参考
・2023 年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン|一般社団法人 日本循環器学会
対症療法
対症療法は、睡眠時無呼吸症候群によって生じる症状を和らげるための治療法です。
主な対症療法であるCPAP治療、口腔内装置治療、ナステントについて見ていきましょう。
CPAP(シーパップ)治療
CPAPとは、専用の装置からマスクとホースを通して鼻から空気を送ることで、気道が塞がらないようにする方法です。
CPAP療法を実施することによって、寝ている間のいびきや無呼吸状態を減らす効果が期待できます。
ほとんどの睡眠時無呼吸症候群の方に、症状の改善が期待できる有効な治療法です。
また、睡眠時無呼吸症候群により血圧が上昇している場合には、血圧を下げる効果も期待できます。
この治療法は、検査によって診断基準を満たす場合には保険が適用になります。
口腔内装置(OA、いびきのマウスピース)治療
口腔内装置(OA、いびきのマウスピース)治療は下顎を若干前に出るように固定し、気道に空気が通りやすくする方法です。
予備軍の方から軽度、中等程度の睡眠時無呼吸症候群の方にすすめられます。また、CPAP療法と併用して使用することも可能です。
口腔内装置は歯科医師に製作を依頼するもので、製作には保険が適用される場合があります。
ナステント
ナステントとは、鼻から喉にかけてチューブを挿入して空気をスムーズに通し、気道が塞がれるのを防ぐ治療です。
チューブを通しているため、寝ている間に呼吸が止まったりいびきをかいたりすることを予防できる可能性があります。
CPAP療法をするほどではない、軽症の場合に適した治療法だといえます。
ナステントは持ち運びが簡単で使った後は捨てられるため、出張や旅行時にも活用できるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群対策のグッズを使う
睡眠時無呼吸症候群の治療には、投薬をする方法や鼻腔を広げるグッズでセルフケアをする方法もあります。
主な3つの治療法について見ていきましょう。
鼻テープやマウステープ(口呼吸をしない)
鼻腔を拡張するテープやマウステープは、寝ている間にいびきをかくことがある場合や軽度の睡眠時無呼吸症候群には有効な場合もあります。
薬局や通信販売などで手に入れることができますが、寝ている間にテープが外れるケースも多いため注意が必要です。
市販のテープで様子を見て良いのかどうかは、医師に相談する必要があるでしょう。
鼻づまり解消スプレー
一時的な鼻づまりを解消するためのスプレーが有効な場合もあります。
ただし、鼻スプレーはポリープがあったり、鼻に空気が通りにくい構造であったりする場合には効果がありません。
また、スプレーに依存的になることがあるので、使用にあたっては医師に相談しましょう。
弾性ストッキング
弾性ストッキングとは、血流促進のサポートをしてくれるアイテムです。
血液を足先から心臓へ戻しやすくするため、睡眠時無呼吸症候群の原因となる気道周りのむくみを改善できます。
自己判断は危険!主治医と相談しながら治療をしよう
睡眠時無呼吸症候群への対処を自己判断するのは危険です。
また、治療を始めた後でも、治療の効果を自己判断しないようにしましょう。
医師と話し合ったうえで、治療の効果を確認するために検査を受ける必要があります。
睡眠時無呼吸症候群は年齢を重ねたり、体重が変化したりすることによって重症度が変わる病気です。
知らず知らずの悪化により、いびきをかいたり昼間眠くなったりすることもあります。症状によってはいくつかの治療方法を並行して行わなければなりません。
定期的に医師の診察を受け、適した治療法に調整していきましょう。
睡眠時無呼吸症候群は合併症を伴う恐れがあり、決定的な治療法のない、長期的な付き合いの必要な病気です。
心当たりのある症状がありましたら、お早めに専門クリニックにご相談ください。
【よくある質問】
Q.睡眠時無呼吸症候群の治療方法には、どんなものがありますか?
A.睡眠時無呼吸症候群の治療方法は、重症度によって異なり、「CPAP治療」「口腔内装置治療」「外科手術」「酸素療法」など多岐にわたります。
中でも代表的な治療がCPAP治療で、専用の装置を鼻に装着し、マスクとホースを通して空気を送ることで、軌道が塞がることを防ぎます。
睡眠時無呼吸症候群により上昇した血圧を下げる効果も期待できます。
Q.睡眠時無呼吸症候群は自分で治せますか?
A.自分で行う睡眠時無呼吸症候群の治療方法には、鼻テープやマウステープで鼻腔を広げる方法等があります。
それでも治まらない場合は、まずは検査を受け、医師と相談したうえで適切な治療をすることが望ましいです。