睡眠時無呼吸症候群を予防したい!有効な対策を徹底解説
目次
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を下げるだけでなく生活に悪影響を及ぼし、ひいてはあらゆる疾病の原因にもなると言われています。睡眠時無呼吸症候群を予防するための一案として、自分でできる対策に取り組むことが大切です。では具体的に、どのような取り組みが効果的なのでしょうか。今回の記事で紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害の一種で、SAS(Sleep Apnea Syndrome)とも呼ばれます。症状としては、睡眠中に一定時間以上、複数回にわたって呼吸が止まってしまうことが代表的です。
医学的には10秒以上の呼吸停止が起こることを「無呼吸」状態とし、平均して1時間に5回以上、この無呼吸状態に陥る場合、睡眠時無呼吸症候群を患っているとみなします。
また、完全に呼吸が止まらなくても、10秒以上、換気量の50%以上が低下する「低呼吸」状態が1時間に5回以上起こるような場合も、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、原因や症状によって3つのタイプに分類され、その詳細は次のとおり通りです。
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症は、空気の通り道である気道が何らかの事情により塞がれることで、呼吸が止まってしまうタイプです。睡眠時無呼吸症候群のうち、9割は閉塞性睡眠時呼吸症に該当します。
また、大きないびきも閉塞性睡眠時無呼吸症の特徴です。塞がれて狭くなった気道を、無理やり空気が通り抜けようとすることから起こります。
中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)
中枢性睡眠時無呼吸症は、何らかの原因で脳からの「呼吸をしなさい」という命令が出なくなり、無呼吸状態に陥ります。気道が塞がっているわけではないため、閉塞性睡眠時無呼吸症のように大きないびきは起こりません。
閉塞性睡眠時無呼吸症に比べると中枢性睡眠時無呼吸症を患っている患者さんは珍しく、全体の数%程度です。心不全と関係が深いタイプだと考えられていて、心臓の機能が低下した方の多くに、この中枢性睡眠時無呼吸症の低呼吸が見られます。
混合型睡眠時無呼吸症
混合型睡眠時無呼吸症は、閉塞性睡眠時無呼吸症と中枢性睡眠時無呼吸症が組み合わさったタイプです。中枢性睡眠時無呼吸症に比べると発症率は高いものの、こちらも数はそれほど多くありません。
混合型睡眠時無呼吸症の症状は、基本的には閉塞性睡眠時無呼吸症と同じです。そして、治療もまた、閉塞性睡眠時無呼吸症と同様の内容で行われます。
参考
睡眠時無呼吸症候群の原因と予防について|にしかわ耳鼻咽喉科
2021/09/20,睡眠時無呼吸症候群の5つの対策方法
2020.06.12,睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる症状とは?
睡眠時無呼吸症候群を発症すると、睡眠の質が下がって睡眠不足を引き起こすため、さまざまな症状が現れます。次に挙げる症状が見られる場合は、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があると考えられます。ご自身に当てはまる症状がないかどうか、照らし合わせてみましょう。
日中に見られる症状
日中に見られる症状のうち、多く聞かれるのは、眠気・だるさ・疲労感・記憶力や性欲の低下・集中力が途切れがちになるなどの症状です。また、仕事中や昼食後に、眠気がさらに強まり、作業効率が下がったり居眠りをしたりするケースもあります。
夜間に見られる症状
夜間に見られる症状は、大きないびき・呼吸の停止後に再びいびきをかき始める・夜間覚醒・トイレの回数が増える・汗の量が増えるなどが挙げられます。このうち、いびきや呼吸の停止は、自分自身では気づけないため、家族やパートナーからの指摘で初めて分かる症状です。
起床時に見られる症状
十分な睡眠時間を確保したにも関わらず、起床時にすっきり起きられない・喉が渇いている・ぐっすり寝た気がしない・頭痛・抑うつなどの症状がある場合も、睡眠時無呼吸症候群の発症が考えられます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の4つの原因
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の原因をもう少し詳しく見ていきます。タイプによって原因は異なりますが、今回はタイプの違いに関係なく、睡眠時無呼吸症候群の患者さんによくある原因を挙げました。睡眠時無呼吸症候群の予防・対策をするには、原因を知り、理解することが大切です。ぜひ下記の内容を参考にしてください。
また、別のコラムでも睡眠時無呼吸症候群の原因について解説していますので、併せてお読みいただくことをおすすめします。
①肥満体型
睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因としては、肥満体型であることが挙げられます。
肥満体型が原因で睡眠時無呼吸症候群を患っている方は、多くの場合が閉塞性睡眠時無呼吸症に該当します。
なぜ肥満体型が睡眠時無呼吸症候群に繋がるのか?それは、顎あごや首のまわりについている脂肪が、就寝時に気道を圧迫し、狭めてしまうからです。これにより無呼吸状態や低呼吸状態を引き起こします。
②骨格に問題がある
下あごが小さいなど、骨格に問題があって睡眠時無呼吸症候群を発症する患者さんもいます。こちらも閉塞性睡眠時無呼吸症に該当するケースが大半です。
就寝中は舌の筋肉が緩み、喉の奥へと落ちやすくなります。下あごが小さい方ほど気道が狭いので、就寝中、舌の根によって気道が塞がれやすくなります。
下あごが小さい方以外では、首が短い方や歯並びが悪い方なども、睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性が他の方よりも高いです。
③仰向けに寝ている
体型にも骨格にも問題がないのに、睡眠時無呼吸症候群を発症してしまうケースがあります。この場合、就寝中の姿勢が関係している可能性が考えられます。具体的には、仰向けに眠っていると睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性が高いです。
前述したように、就寝中は舌の筋肉が緩んで喉の奥へと落ちやすくなります。仰向けの姿勢でいると、舌の根はさらに喉の奥へと落ちやすく、気道も狭くなるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが上昇するのです。
また、就寝中の姿勢が問題で睡眠時無呼吸症候群を発症すると、息苦しい状態からの覚醒反応が起こり、睡眠の質が低下するという問題も発生します。比較的改善しやすいのが救いと言えるでしょう。
④中枢性に異常がある
睡眠時無呼吸症候群のうち、中枢性睡眠時無呼吸症の原因となっているのが中枢性の異常です。
前述の通り、脳からの指令が出ないことで無呼吸・低呼吸状態に陥ることは分かっていますが、医学的に未解明の部分も多いです。
参考
2022/04/05, 【医師監修】睡眠時無呼吸症候群の対策|原因や症状・治療方法まで詳しく解説
2021/09/20,睡眠時無呼吸症候群の5つの対策方法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)により高まるリスクとは?
睡眠時無呼吸症候群は、さまざまな疾病や事故などを引き起こすリスクが高まることが分かっています。具体的にどのようなリスクがあるのか、ひとつずつ詳しく解説します。
生活習慣病
糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、睡眠時無呼吸症候群によってリスクが高まる、代表的な疾病です。
糖尿病と睡眠の質の低下は大きく関係しています。睡眠時無呼吸症候群を発症している人は、そうでない人に比べ、糖尿病の罹患リスクがおよそ1.6倍になるとの調査結果が発表されています。また、睡眠時無呼吸症候群が重症であるほど、合併症として糖尿病を発症する可能性も高まることが分かっているのです。
睡眠の質が低下すると、交感神経の活性化やストレスホルモンの過剰分泌、成長ホルモンの分泌減少などが原因となり、脂肪が増加しやすい状態になります。脂肪の増加で体内のインスリンが正常に働かなくなりますが、この状態が慢性化すると糖尿病と診断されます。
糖尿病同様、高血圧も発症リスクが高い生活習慣病です。無呼吸の状態では睡眠中も体にストレスがかかり続け、交感神経の興奮状態が続くため、心拍数が上がると同時に血管も収縮することで血圧が上がります。
もともと高血圧の患者さんが、睡眠時無呼吸症候群を発症すると、血圧はさらに上がってしまいます。他の疾病を発症するリスクも上がるため、高血圧には特に注意しなくてはいけません。
心血管系疾患
睡眠時に低酸素状態が続くと、心臓に大きな負担がかかります。そのために、心筋梗塞・狭心症・心不全などの心血管系疾患を引き起こすリスクが高まるのです。
脳卒中
脳卒中とは、脳血管障害とも言われ、脳の血管がつまったり破れたりすることで脳の働きに支障をきたす疾病です。血管がつまる場合は脳梗塞・破れる場合は脳出血と呼ばれます。脳卒中の原因は、先に挙げた高血圧や心筋梗塞なども含まれるため、発症リスクが上がります。
日中の眠気による事故
日中の眠気が強い場合には、運転ミスなどを引き起こしやすく、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある交通事故につながるケースが多発しています。
2002年に和歌山県で発生した正面衝突事故や、2012年に関越自動車道で発生したツアーバス事故などは、いずれも運転手が睡眠時無呼吸症候群を患っていた疑いが拭えないとされています。睡眠時無呼吸症候群を含む、重度の睡眠障害を持っていると、運転免許証の取り消しおよび停止の対象となっています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を予防・対策するために今日からできる取り組みは?
睡眠時無呼吸症候群の予防には、医療機関の受診もひとつの方法ですが、自分ですぐに取り組める対策もあります。方法をいくつか紹介しますので、できることから始めてみましょう。
肥満を解消する
睡眠時無呼吸症候群の原因として、最も多いのは肥満です。気道周辺の脂肪が気道を圧迫してしまう症状を改善するため、減量によって肥満解消を目指しましょう。
減量するためには、食事のカロリーを減らした上で糖質や脂質を控え、栄養バランスのとれた食事内容を心がけるとともに、ウォーキングなどの適度な運動を増やすことが大切です。ただ、睡眠時無呼吸症候群を発症していると、日中の眠気が強いために運動ができない場合もあります。無理のない範囲で運動できると良いでしょう。
飲酒量に注意する
飲酒をすると上気道についている筋肉が普段よりもさらに緩み、上気道が狭くなるリスクが高まります。特に寝る前の飲酒はこの傾向がさらに強まり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状をさらに悪化させます。寝る前の飲酒は控えるようにしましょう。
禁煙する
タバコは血中酸素を低下させるとともに、気道の炎症を引き起こすため、睡眠時無呼吸症候群の症状が起きやすくなります。喫煙者は、非喫煙者に比べ睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高いため、予防のためには禁煙するのが近道です。
口呼吸から鼻呼吸へ変える
口呼吸は鼻呼吸よりも咽頭が狭くなり、上気道が塞がりやすくなります。気道や肺が乾燥するのに加え、免疫力が下がるために感染症およびアレルギーのリスクが高まることも分かっています。これらのリスクを下げるために、意識して鼻呼吸へ変えるようにしましょう。
睡眠薬の服用を控える
睡眠薬を服用することでも上気道の拡張筋が緩み、上気道が塞がりやすくなります。睡眠時無呼吸症候群を予防するには、睡眠薬の服用を控えたいところですが、どうしても必要であれば医師と相談してみましょう。
横向きで寝る
仰向けで寝ると、舌根が気道に沈んだり狭まったりするケースが多く見受けられます。横向きで寝ると、この症状を防ぐことが可能です。横向きが慣れないうちは、抱き枕などを使ってみるとスムーズな睡眠が期待できます。
舌のトレーニングを行う
舌の筋力トレーニングを行うことで、舌の落ち込みを防げるようになります。舌のトレーニングでおすすめなのが、あいうべ体操です。
やり方としては、次の4つの動作を順番に繰り返しますが、声は出しても出さなくても効果は変わりません。
1:「あー」の形になるよう、口を大きく開ける
2:「いー」の形になるよう、口を横に大きく広げる
3:「うー」の形になるよう、口を前に強く突き出す
4:「べー」の形になるよう、舌を突き出し下へ伸ばす
この4つの動作を1セットとみなし、1日30セットを目安に続けると効果が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査方法
ここからは、「もしも睡眠時無呼吸症候群になってしまったら」という観点から、検査方法のお話をしていきます。睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合は、医療機関の専門外来に相談することで次のような検査を受けることになります。
簡易検査(アプノモニター)
簡易検査(アプノモニター)では、専用の装置「アプノモニター」を使って睡眠中に発生した無呼吸の回数、血中酸素濃度、いびきの状態などを記録し、睡眠時無呼吸症候群か否かを診断します。アプノモニターを使った検査は自宅で行うのが一般的です。自宅に装置を持ち帰り、就寝時に鼻呼吸センサーと酸素濃度センサーを装着するだけなので、難しい操作は必要ありません。
簡易検査の結果は「AHI」と呼ばれる1時間当たりの無呼吸・低呼吸の合計回数を元に判断され、AHI以上の場合は睡眠時無呼吸症候群と診断されるケースが多く、CPAP治療やマウスピース治療の対象となります。40未満の場合は、次の精密検査に進みます。
AHIについて、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
精密検査(ポリソムノグラフィー)
精密検査(ポリソムノグラフィー)では、睡眠時無呼吸症候群の症状をさらに詳しく調べることで、治療方法を決める指針とします。
精密検査で調べる項目には次のようなものがあります。
・脳波
・眼球運動
・筋電図
・心電図
・いびきの回数
・無呼吸の有無と度合い
・低呼吸の有無と度合い
精密検査を行う場合は入院をする必要がありますが、近年は夜に入院し、翌朝に退院ができる病院が増えているため、仕事に支障をきたすことはほとんどありません。
精密検査の結果、AHIが15以上であれば中程度の睡眠時無呼吸症候群、30以上であれば重症と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群の検査については、下記のコラムも参考にしてください。
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よくある質問
Q.睡眠時無呼吸症候群はどうすれば予防・対策できますか?
A.睡眠時無呼吸症候群の原因は様々ですが、もっとも多いのは肥満体型に起因するものです。肥満体型を解消するため、生活習慣を見直したり、改善したりすることで、睡眠時無呼吸症候群のリスクを低減できます。
また、飲酒や喫煙を控える、口呼吸から鼻呼吸へ変えるなども、睡眠時無呼吸症候群への対策としておすすめです。
Q.睡眠時無呼吸症候群になると、どんな危険がありますか?
A.睡眠時無呼吸症候群によって高まるリスクには、生活習慣病、心血管系疾患、脳卒中などの病気に繋がる恐れがあります。さらに、日中、強い眠気に襲われ、運転ミスによる交通事故を引き起こす可能性も知られています。
いずれも命に関わるため、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある時は、すぐに医療機関で検査を受けましょう。