【実例紹介】睡眠時無呼吸症候群の手術法の種類

睡眠時無呼吸症候群の治療
2022.11.25

【2023年8月21日更新】

多くの人が悩んでいるいびき。慢性的な睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸症候群の発症につながることもあるため、なるべく早く専門医による治療を受ける必要があります。

一般的な睡眠時無呼吸症候群の治療といえば、CPAPが有名です。最も安全性が高く有効であるとして、医療機関では頻繁に行われます。しかし、中には大きなマスクの装着に煩わしさを感じ、途中で治療をやめてしまった人もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、睡眠時無呼吸症候群の外科手術にスポットを当て、どのような施術が行われるのか、実例を紹介しながら解説していきます。睡眠時無呼吸症候群の新たな治療の選択肢として、ぜひ参考にしてください。

【基本情報】睡眠時無呼吸症候群について

苦しむ老人

初めに、睡眠時無呼吸症候群の基本情報について解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間にしばしば呼吸が浅くなったり、止まったりする病気です。発症すると、睡眠中に呼吸をしていない状態(低酸素状態)に何度も陥るため、体は足りない酸素を補おうと中途覚醒を繰り返します。これにより、睡眠が障害され慢性的な睡眠不足に陥ります。その他の症状は以下の通りです。

・睡眠中は常に大きないびきをかく
・寝ている間に何度も目が覚める
・夜間尿
・起床時に強い倦怠感を感じる
・日中に強烈な眠気に襲われる

睡眠時無呼吸症候群の原因は?

睡眠時無呼吸症候群の発症には、さまざまな原因があります。代表的な原因は肥満です。肥満になると首周りや舌に脂肪がつき、寝ている間に気道を圧迫していびきにつながります。特に、男性は中年になると肥満体型になりやすいので注意が必要です。

また、日本人特有のあごの骨格もいびき発生の大きな原因です。欧米人に比べ、日本人はあごが小さく首が太くて短いという特徴があります。そのため、少々の肥満でも首周りに脂肪がつきやすく、いびきのかきやすさに拍車をかけてしまうのです。

次の記事で、いびきをかきやすい人の特徴を詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

参考:
I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
いびきの原因と防止するための対処方法- 対策グッズを紹介
どんな人が「いびき」をかきやすい?

睡眠時無呼吸症候群の検査から診断まで

問診票を見ながら診察をしている医師とその患者

上記のような合併症にならないためには、早期発見と医療機関での早期治療が欠かせません。医療機関では、次のような手順で検査から診断を行います。

問診

まず、医師が患者に睡眠中の様子について問診を行います。

問診でチェックされる内容は、以下の通りです。

・「毎晩いびきをかく」と、家族や周囲の人にいわれる
・「睡眠中に呼吸が止まる」と、家族や周囲の人にいわれる
・しばしば、首を絞められたような窒息感で目覚める
・朝、目を覚ましたときにスッキリせず、熟睡感がない
・日中に激しい眠気がある
・居眠り運転で事故を起こしたことがある
・夜中に2回以上尿意で起きる
・寝汗をかく
・寝相が悪い
・肥満体型である
・倦怠感がある
・血圧が高い

これらの中で2個以上の項目にチェックが入る場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるとして、次のスクリーニング検査を行います。

スクリーニング検査(簡易検査)

スクリーニング検査は、指と鼻にセンサーを取り付け睡眠中の呼吸の様子や酸素濃度、体位、脈拍などのモニタリングを行います。この検査は、携帯もできる簡易的な装置を使用するため、自宅で検査可能です。

この検査を行い、AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を表した指標)が5以上だと「睡眠時無呼吸症候群の疑いあり」と診断され、40以上だと特に症状が深刻であるとして直ちに治療が行われます。その他、重症度を判断する基準は以下の通りです。

・5以上15未満:軽症
・15以上30未満:中等症
・30以上:重症

確定診断(精密検査)

スクリーニング検査によって「睡眠時無呼吸症候群の疑いあり」と判断されると、確定診断のための精密検査を行います。精密検査は自宅で行うスクリーニング検査とは異なり、専門の医療機関に一泊して行います。

確定診断で行われる検査は終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)という検査で、睡眠中の呼吸や体動に加え、心電図や脳波、筋電図などの測定も行います。これにより、簡易検査よりもさらに正確な睡眠中の無呼吸状態を観測することが可能です。検査の結果、AHIが20以上だと睡眠時無呼吸症と診断されます。

参考:
I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
検査方法SASの診断までの流れ
精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー)について|睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群の一般的な治療法

上記でご紹介した検査を経て睡眠時無呼吸症候群と診断されると、いよいよ治療の段階に入ります。

CPAP治療

現在、睡眠時無呼吸症候群の治療法の中で、最も有効性が高いとされているのが、CPAP治療です。CPAP治療は、鼻に装着したマスクに装置から空気を送り込み、持続的な陽圧状態を保つことでいびきの発生を防ぎます。

このCPAP治療を適切に行うことで、睡眠中の無呼吸やいびきが徐々に改善し、ぐっすりと眠れるようになります。また、夜中に何度も目覚めることが減ったり日中の眠気も減少したりするなど、日常生活のパフォーマンスを上げることにもつながります。

CPAP治療のデメリット

ただし、CPAP治療にはいくつかデメリットがあります。

まずは、効果を実感するまでに時間がかかることです。治療を始めたからといって、一朝一夕に効果が出るわけではありません。

加えて、マスク装着に慣れなければならないことも欠点のひとつです。睡眠中は、マスクから絶えず空気が送り込まれ続けるので、人によっては不快感となり、眠りが妨げられてしまうこともあります。

そして、最も重要なデメリットは、CPAP治療はあくまでも対症療法で根本治療にはつながらないことです。視力の低い人がメガネをかけても視力が回復しないように、CPAP治療を行っても、いびきが完全に治るわけではありません。

以下の記事では、睡眠時無呼吸症候群の治療法について解説しているので、こちらも参考にしてください。

参考:
治療について|検査と治療|睡眠時無呼吸症候群なおそう.com
CPAP療法|睡眠時無呼吸症候群とは

【実例紹介】睡眠時無呼吸症候群の手術法

手術中

治療効果は確かなCPAP治療ですが、上記のようなデメリットが影響し、途中で治療を断念してしまう人も多くいます。では、睡眠時無呼吸症候群の根本治療にはどのようなものがあるのでしょうか?新たな治療の選択肢として、外科手術による治療をご紹介します。

【実例1】上下顎同時前進術

まずは、上下顎同時前進術です。わかりやすく説明すると、上下のあごの骨を切って前にずらすことで口の中のスペースが広がり、呼吸がしやすくなるという方法です。この上下顎同時前進術は、睡眠時無呼吸症候群に対する外科治療の中で特に治療効果が高い方法といわれており、多くの医療機関で実施されています。

もともとは矯正歯科で行われていた治療法でしたが、近年睡眠時無呼吸症候群に対しても効果を示すことがわかり、いびき治療でも実施されるようになりました。

しかし、無呼吸の治療に対しては健康保険が適用されないため、費用はすべて自己負担になります。また、手術前に矯正治療を1年以上行った後にようやく手術をすることができるため、今すぐに睡眠時無呼吸症候群を改善したいと思う人には不向きな方法です。

参考:
睡眠時無呼吸症候群の手術療法
睡眠時無呼吸症候群に対する外科的治療

【実例2】口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)は、口蓋垂(のどちんこ)とその周囲の口蓋を部分切除して減量することで、呼吸をしやすくし、いびきを改善させる方法です。

この方法も、いびき・無呼吸に対する一般的な外科手術として行われており、特に扁桃肥大がある患者に対しては優れた効果を発揮します。ですが、逆に扁桃肥大がない場合の手術効果は大変低くなるため、術前の咽頭形態の評価が重要です。その他にも無呼吸低呼吸指数(AHI)、年齢、肥満度、下顎の⼤きさなどを考慮して、手術による治療の必要性が判断されます。

そしてこの治療法は、術後のいびき再発率の高さが問題となっており、欧州では積極的に行われていないのが現状です。そのため、術後もいびきが再び発生しないか、経過観察をしていく必要があります。

【実例3】オトガイ舌筋前進術

オトガイ舌筋前進術は、下あごを部分的に骨切りして前方に移動させることで、下顎骨裏面にあるオトガイ舌筋を前にずらして気道を拡大する方法です。わかりやすくいうと、骨をずらすことで舌の筋肉を前に引っ張っているような状態になり、これによって睡眠中に舌が落ち込むことによるいびきを防止することができます。

先ほど紹介した、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)と一緒に行われることがあり、併用することでさらに高い治療効果を発揮します。

この治療法における、いびき再発率の高さは報告されていませんが、こちらも同様に術後はしばらく経過を観察していくことが必要です。

参考:
睡眠時無呼吸症候群に対する外科的治療
口腔外科

【実例4】扁桃肥大摘出手術

扁桃肥大とは、喉の奥にある扁桃(扁桃腺)が通常よりも大きいことを指し、⼀般的に⼩児において発症するものです。しかし、まれに大人になっても扁桃肥大が認められ、睡眠時無呼吸症候群の原因となっている場合があります。扁桃肥大摘出手術は、この肥大した扁桃を切除し気道の通りを良くすることで、いびきの解消を行う方法です。

ただし、実施においては少々ハードルもあります。成人で扁桃肥大が認められる場合、患者は肥満症を併発しているケースが多いです。肥満体型の人は高血圧症である場合も多いため、手術の実施には慎重な判断が必要になります。ですので、手術の前にまずは肥満改善を行う場合もあるため、治療方針をどうするか医師とよく相談することが大切です。

参考:
睡眠時無呼吸症候群の手術療法

【実例5】鼻中隔湾曲症矯正手術・粘膜下下鼻甲介骨切除術

鼻の中で左右の鼻腔を隔てる壁のことを鼻中隔(びちゅうかく)といいますが、この鼻中隔が生まれつき大きく湾曲していて、睡眠中の鼻呼吸を著しく妨げる場合があります。これが鼻中隔湾曲症です。

この鼻中隔湾曲症解消のために、鼻中隔湾曲症矯正手術を行います。方法としては、曲がった鼻中隔の軟骨を削り、真っ直ぐにするのが一般的です。これにより鼻の通りが良くなって、睡眠中の鼻呼吸が促されるようになります。

また、鼻中隔の歪みを治すのと併行して、粘膜下下鼻甲介骨切除術も行われます。これは、主にアレルギー性鼻炎のような鼻の炎症を併発している場合に行われる手術で、鼻の内部にある下鼻甲介と呼ばれる突起を切除することで、鼻の通りを改善します。

この外科手術は、上記で紹介した4つの方法と異なり、全身麻酔下では行われません。また、他の4つの方法では術後の入院が必要ですが、こちらは日帰り手術が可能です。他の方法と比べて手術のハードルは低いので、鼻の通りが悪いことによるいびきで悩んでいる人は、なるべく早く耳鼻咽頭科を受診するのが良いでしょう。

参考:
鼻中隔湾曲症の原因と治療
睡眠時無呼吸症候群の手術療法

睡眠時無呼吸症候群の手術にはどんなリスクと影響があるの?

悩んでいる男性

上記のように、睡眠時無呼吸症候群の外科手術は高い治療効果が見込めます。

とりわけ、CPAP治療が対症療法で根本治療にならなかったのに対し、外科手術はいびきや無呼吸の要因そのものにアプローチするので、根本治療を目指すことができます。

ただし、睡眠時無呼吸症候群の外科手術には下記のようなリスクと影響があります。

基礎疾患のある人や薬を服用中の人は十分な準備が必要

基礎疾患のある人に対して睡眠時無呼吸症候群を行う場合は、入念な準備が必要です。

基礎疾患とは、呼吸器疾患や心臓、腎臓、肝臓、糖尿病といった疾患のことを指します。こうした疾患で通院や薬を服用している人は、手術の際に合併症を起こすリスクがあります。

特に、睡眠時無呼吸症候群を発症する人は肥満であったり、糖尿病であったり、高血圧や心臓病の予備軍だったりすることが多いため、手術の前には入念な診断と準備が必要です。

術後の副作用やダウンタイムがある

外科手術後には、副作用や長いダウンタイムを要する場合があります。

特に、上下顎同時前進術はあごの骨を切るため術後には大きく腫れたり、痛みを伴ったり、入院が必要になったりするため、日常生活への影響は大きいです。

また、比較的負担が少ないとされる扁桃肥大摘出手術も術後は喉の痛みや違和感、多少の出血が見られることがあるため、手術の前には医師から副作用について十分に説明を受けることをおすすめします。

費用が高額

睡眠時無呼吸症候群の外科手術は、費用が高額になるのもデメリットです。

中でも、上下顎同時前進術は手術を受ける前に1年以上の歯の矯正治療を行う必要もあるため、トータルすると50〜75万円の費用がかかります。

ただし、上記の場合は高額療養費制度が適用される上に確定申告時の医療費控除対象にもなるため、実際の支払額は目安よりも抑えることができるので、詳しくは担当の医師に相談しましょう。

参考:
いびきについて – 日本睡眠歯科学会
I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

睡眠時無呼吸症候群の根本治療が日帰り手術で目指せる?

すっきりしている女性

このように、睡眠時無呼吸症候群は放置すると命を脅かしかねない危険な合併症の発症につながります。そのため、なるべく早い専門医による治療が大切です。

しかし、CPAP治療のような対症療法では、いびきの原因をもとから断つ根本治療はできないため、根本治療をするには外科手術によっていびきの原因を取り除く必要があります。

ですが、外科手術は副作用のリスクや術後のダウンタイム、そして費用面の負担が大きいのがネックです。

そんな人にぜひおすすめしたい治療法が、当院で実施しているパルスサーミア治療です。

パルスサーミア

パルスサーミアとは、口蓋垂や軟口蓋にレーザーを照射し粘膜の膨らみを取り除くことで、気道を広げていびきを改善するレーザー治療です。当院で行っているオリジナルの治療法で、これまでたくさんの方に大きな効果を実感していただいています。

では、特徴をご紹介しましょう。パルスサーミアは、いびきの原因である気道の閉塞を取り除き、いびきを解消する外科手術です。説明したように、従来の外科手術は術後に強い副作用やダウンタイムがあり、患者にとってかなりストレスが大きく苦痛を感じるものでした。

しかし、パルスサーミアは特殊なレーザーを使用しているため、照射した粘膜の出血・痛みはほとんどありません。また、術後のダウンタイムも数日で済むので、スムーズに日常生活に戻ることができます。さらに、施術にかかる時間はわずか15分程度なので、日帰り手術が可能なところもご好評いただいているポイントです。

いびきメディカルクリニックでの治療をお考えの方へ

当院で行っているパルスサーミアは、いびきの根本治療をしながら日常生活をストレスなく送っていただくことができます。いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩むすべての方に、自信を持っておすすめできる治療法です。

当院で治療を受けてみたいと思った方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。「治療について、ちょっと話を聞いてみたい!」という方も大歓迎です。当院は、お客様にご納得いただいた上で治療に臨んでもらうため、初回のカウンセリングと診察を無料で行っています。ですので、治療を始める前に専門スタッフとしっかり打ち合わせをしていただくことが可能です。WEBとLINEの2種類の予約フォームを用意しておりますので、そちらをご活用ください。

以下の記事では、パルスサーミア以外の睡眠時無呼吸症候群のレーザー治療について解説しています。ぜひ参考にしてください。

参考:
いびきの治療法|いびきメディカルクリニック

まとめ

カウンセリングを受けている女性

今回は、いびき・睡眠時無呼吸症候群の治療法のひとつである、外科手術について解説しました。外科手術は、CPAP治療のような対症療法とは違い、いびきの原因を直接取り除くため根本治療が期待できます。しかし、それゆえに副作用も多く患者の負担が大きいのが現状です。

いびき・睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の程度や他疾患の有無によって最適なものが異なります。そのため、自分にはどんな治療法があっているのかを知ることが、睡眠時無呼吸症候群を解消する第一歩です。ぜひ、お近くの睡眠外来やいびき外来、呼吸器科、耳鼻咽喉科を受診し、専門医による治療を受けるようにしましょう。

【よくある質問】

Q.睡眠時無呼吸症候群の手術方法は?

A.一般的なものだと、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)や上下顎同時前進術などがあります。他には、オトガイ舌筋前進術や扁桃肥大摘出手術、そして鼻中隔湾曲症矯正手術などがあり、これらもよく行われる方法です。

Q.手術のリスクにはどんなものがある?

A.睡眠時無呼吸症候群の手術は、メスやレーザーを使用するため術後に痛みが出たり、腫れたりする可能性があります。また、食生活にしばらく影響が出るなどのダウンタイムや費用面の負担もあるため、よく医師と相談して、手術を行うか検討する必要があります。

このページの監修医師
田沼 欣樹いびきメディカルクリニック いびき専門医
いびきや睡眠時無呼吸症候群は様々な病気に合併しやすいと言われています。健康寿命を伸ばす為にも早期診断・治療をおすすめします。いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩む患者様へ、当院のレーザー治療で快適な睡眠手に入れていただき、健康をサポートすることをモットーに日々取り組んでいます。
田沼 欣樹
いびきや睡眠時無呼吸症候群は様々な病気に合併しやすいと言われています。健康寿命を伸ばす為にも早期診断・治療をおすすめします。いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩む患者様へ、当院のレーザー治療で快適な睡眠手に入れていただき、健康をサポートすることをモットーに日々取り組んでいます。
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