睡眠薬とは?睡眠導入剤との違いは?効果や副作用について分かりやすく解説!
目次
ベッドに入ってもなかなか寝付けず、睡眠不足が続いている人も多いでしょう。ただ日常生活にも影響が出てしまうため、睡眠薬や睡眠導入剤の利用を検討している人もいるはずです。
この記事では、睡眠薬とは何なのか、睡眠導入剤との違いがあるのかについて詳しく解説します。また、種類や副作用、服用しても効果がない人の特徴なども説明しているので、これから服用を検討している方は、事前情報としてチェックしてみてください。
睡眠薬とは
睡眠薬とは、成分の効果を利用して睡眠を誘発し、持続させる薬剤のことです。睡眠の質を改善して眠りやすくなる効果を期待でき、主に次のような人たちが使用しています。
- 寝つきが悪い(入眠困難)
- 睡眠の途中で目が覚めてしまう(中途覚醒)
- 短時間の睡眠でも早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
用法用量を守り適切に服用すれば、安全に睡眠の悩みを解決へ導けるのが魅力です。不眠症といった睡眠トラブルを抱えている人などに効果があります。
睡眠薬で眠くなる仕組み
睡眠薬を服用することで眠気を感じるのは、睡眠薬に含まれている成分の効果が「脳内の神経伝達物質や受容体」に作用し、脳の覚醒が抑制されるためです。
例えば不眠症でお悩みの方などは、自律神経が乱れているといった影響で夜中も脳が覚醒しています。対して睡眠薬を服用すれば、脳の覚醒状態を鎮めることが可能です。覚醒状態が収まることで、自然な眠気が誘発され、服用から10~30分程度で眠気を感じるようになると言われています。
下記記事では脳の構造と神経伝達物質の関係について詳しく解説しています。併せてご覧ください。
睡眠薬と睡眠導入剤の違い
睡眠トラブルの解消に向けて薬の服用を考えている人は、事前に睡眠薬と睡眠導入剤の違いを把握しておくことが大切です。参考として以下に、睡眠薬と睡眠導入剤の主な違いを整理しました。
<睡眠薬>
- 効果
入眠を助け持続させる - 睡眠トラブルの程度
中~重度 - 作用時間
長い - 購入時の条件
処方箋が必要
<睡眠導入剤>
- 効果
入眠を促進させる - 睡眠トラブルの程度
軽度 - 作用時間
短い - 購入時の条件
医療用:処方箋が必要
市販用:処方箋が不要
どちらも不眠症や中途覚醒といった睡眠トラブルに対する効果を期待できますが、利用すべき対象者や入手方法などが違います。2つの薬剤の違いがわからない方は、ぜひ参考にしてみてください。
【睡眠薬と睡眠導入剤の違い1】利用すべき人の特徴や悩み
まず睡眠薬は、次のような睡眠の悩みを抱えている人を対象として提供されています。
<睡眠薬の対象者>
- 中度から重度の不眠症を抱えている
- 慢性的な睡眠障害に悩んでいる
- 眠っても頻繁に目が覚める
- 中途覚醒や早朝覚醒の頻度が多い
一方で睡眠導入剤は、次のように睡眠薬の対象者よりも軽度なトラブルに悩む人が利用するのが特徴です。
<睡眠導入剤の対象者>
- 寝つきが悪い
- ストレスで眠れない
睡眠トラブルの程度で睡眠薬と睡眠導入剤のどちらを利用すべきかが変化するため、慢性的な悩みなら睡眠薬、単発的な悩みなら睡眠導入剤を利用するのが良いでしょう。
【睡眠薬と睡眠導入剤の違い2】入手できる場所や方法
まず睡眠薬は、睡眠専門のクリニックを受診しなければ手に入りません。
一方で睡眠導入剤は製品によって購入できる場所が異なります。
例えば、処方箋が必要な「医療用の睡眠導入剤」は、クリニックでしか手に入りませんが、処方箋が不要な「市販用の睡眠導入剤」であればドラッグストアやECサイト(オンラインショッピングサイト)などでも入手が可能です。
【睡眠薬と睡眠導入剤の違い3】医師の診察が必要か
処方箋がなければ手に入らない睡眠薬および医療用の睡眠導入剤を入手する際には、必ず医師の診察が必要です。一方で、処方箋がなくても手に入る市販用の睡眠導入剤は、診察を受けなくとも購入できます。ただし、初めて睡眠導入剤を購入するため種類や成分のことがよくわからないとお悩みの人は、医師の診察を受けておくと安心です。
【睡眠薬と睡眠導入剤の違い4】購入時に処方箋が必要かどうか
睡眠薬および医療用の睡眠導入剤を入手する際には、必ず処方箋の提示を求められます。対して抗ヒスタミン系の成分を含むものや、軽度の不眠向けサプリメントといった市販用の睡眠導入剤であれば、処方箋を必要としません。
睡眠薬・睡眠導入剤の種類とその効果
睡眠薬・睡眠導入剤を入手する際には、購入する薬剤によって成分や効果が異なります。参考として、薬剤に含まれる成分とその効果をまとめました。
【睡眠薬・睡眠導入剤】ベンゾジアゼピン薬
ベンゾジアゼピン薬は、中枢神経系における主要な抑制性神経伝達物質「GABA受容体」と結合して、覚醒状態を抑制する成分を含んでいます。鎮静効果や睡眠誘発効果、不安軽減作用を強めることができ、自分で眠るタイミングを決められるというように、自然な眠気を誘発できるのが特徴です。
参考:
ベンゾジアゼピン| 日本薬学会
【睡眠薬・睡眠導入剤】オレキシン受動態拮抗薬
オレキシン受動態拮抗薬は、睡眠と覚醒を調整する神経伝達物質「オレキシン」の働きを抑えて、強制的に気を失う眠気ではなく、ベッドに入ってゆっくりと眠れるような自然な眠気を誘発する薬剤です。自律神経系に関わる睡眠のリズムを調整でき、ほかの薬剤と比べて依存性が少ないことから、長期利用に向いています。
参考:
オレキシン受容体拮抗薬の比較について |宮崎県病院薬剤師会
【睡眠薬】非ベンゾジアゼピン薬・Zドラッグ
非ベンゾジアゼピン薬は、前述したベンゾジアゼピン薬と似た効果をもちながら、異なる化学構造で構成された薬剤です。特に催眠と鎮静作用を期待でき、ベンゾジアゼピンよりも不眠症への効果が高いと言われています。またベンゾジアゼピン薬と比べて依存性が低く、副作用が少ないのがメリットです。
尚、ベンゾジアゼピン系ではない睡眠薬は、一般名の頭文字にZが多く含まれることから、Zドラッグとも呼ばれています。
参考:
ベンゾジアゼピン受容体作動薬とその他の睡眠障害治療薬の薬理作用および問題点| 宮原 由香里
【睡眠薬】メラトニン受容体作動薬
メラトニン受容体作動薬は、睡眠・覚醒のリズムを調整するホルモン「メラトニン」の働きを補助する薬です。体内時計のリズムを調整することで夜になると眠気を感じるというように、自然な眠りを促し、不眠症や睡眠リズムの乱れの改善を期待できます。
睡眠薬・睡眠導入剤の副作用
睡眠薬や睡眠導入剤を安全に利用したいなら、服用し続けることで起きる副作用について覚えておくことが欠かせません。自身の健康を維持するためにも、各副作用についてチェックしておきましょう。
参考:
睡眠薬の特徴と注意点―新しいタイプの薬剤を含めて―|北村 正樹
【睡眠薬・睡眠導入剤の副作用1】日中の眠気
睡眠薬や睡眠導入剤は、服用して眠った後も薬の効果が残り、翌朝や日中(仕事中など)に眠気を感じる場合があります。
特に長時間作用する薬剤を服用したときには成分の効果が残りやすいことに注意が必要です。また薬剤の効果は個人の体質や服用量によって変化します。集中力の低下や運転の眠気などを感じる場合もあるので気を付けて服用しましょう。
【睡眠薬・睡眠導入剤の副作用2】めまい・頭痛・転倒
翌日目が覚めてからも睡眠薬や睡眠導入剤の効果が残っている場合には、めまいや頭痛を感じるかもしれません。
例えば、薬の成分が体内に残留していると、立ちくらみやめまい、ふらつきを感じることも少なくありません。特に高齢者など足腰に不安がある人などは転倒のリスクが高まり、骨折やケガが生じるかもしれません。寝起きに頭痛がする、普段よりもふらつくという方は、少し休憩をとってから動くことをおすすめします。
【睡眠薬・睡眠導入剤の副作用3】物忘れ
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系(Zドラッグ)の成分を含む睡眠薬を服用すると
「昨日は何をしたかな?」
「何か予定があったような…」
というように、物忘れの症状が起きることがあります。
上記の成分は脳のGABA受容体に作用し、眠気を引き起こす一方で、短期的な記憶にも作用してしまうのが気をつけるべきポイントです。服用後に日常的なことを忘れてしまう、また起きた出来事を思い出しにくくなるといったケースもあるので注意してください。
なお物忘れの副作用は高齢者に多く見られると言われています。服用後に物忘れが増えたという場合には、ほかの薬剤に変更するのが良いかもしれません。
【睡眠薬・睡眠導入剤の副作用4】イライラ・ストレス
睡眠薬や睡眠導入剤を長期的に服用し続けると、薬の作用が効きにくくなるせいで、イライラやストレスを感じることがあります。
例えば、服用を始めたばかりの頃は効いていた薬の作用が、服用期間が長くなるたびに効きにくくなるというケースも少なくありません。徐々に薬が効かなくなる焦りからストレスを感じやすくなるほか、薬に対する依存度が増してしまい、効果が切れる際の気分の落ち込みや焦りでイライラを感じる場合があります。
睡眠トラブルが重症化している人はもちろん、長期にわたり睡眠導入剤を服用しているという方は、いらいらやストレスの問題を発生させない、もしくは抑えるためにも、一度睡眠専門のクリニックで相談を始めましょう。
【睡眠薬・睡眠導入剤の副作用5】悪夢・せん妄
一部の睡眠薬や睡眠導入剤を服用すると、悪夢やせん妄(精神状態が混乱するほか、現実感が乏しくなる状態)を引き起こすことがあります。例えば、次のような場合に悪夢やせん妄が起きやすい傾向が強いです。
- 睡眠に作用する成分を多く含む睡眠薬や睡眠導入剤を服用した場合
- 薬に対する感受性が強い人が睡眠薬や睡眠導入剤を服用した場合
また、悪夢やせん妄は睡眠の質を落としてしまう影響があることにも注意しなければなりません。長時間眠っても、悪夢のせいで身体が休まらないというケースもあるので、薬の服用を一時的に中止するか、分量を調整するといった対策が必要です。
ただし服用について自己判断をすると、睡眠トラブルを解決できない場合もあることから、まずは睡眠専門のクリニックに相談することをおすすめします。
睡眠薬・睡眠導入剤が効かない人の特徴
睡眠薬や睡眠導入剤の服用を検討している人(また現在進行形で服用している人)のなかには、期待する効果を得られないという人もいます。自身にあてはまる項目がないかチェックしてみてください。
参考:
ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存|厚生労働省
精神安定剤および睡眠薬の乱用・依存の実態と予防に関する研究|川上 憲人(岐阜大学医学部公衆衛生学教室助教授) 厚生労働科学研究成果データベース
【睡眠薬・睡眠導入剤が効かない人1】服用期間が長い
すでに睡眠薬や睡眠導入剤を服用しており長期間服用し続けているという人は、自然と薬への耐性ができて、睡眠薬および睡眠導入剤が効きにくくなることがあります。
耐性ができると、同じ量の薬を服用しても十分な効果を得られないため、今までよりも用量の多い薬剤が必要になるかもしれません。特にベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系(Zドラッグ)などは耐性がつきやすく、効果が減少したり、薬がまったく効かなくなったりと、不眠症が一層悪化するリバウンド不眠が生じる場合があります。
【睡眠薬・睡眠導入剤が効かない人2】体質
個人の体質によっては、睡眠薬や睡眠導入剤を服用しても十分に効果を発揮されない場合があります。参考として体質による主な要因を整理しました。
- 代謝がはやい影響ですぐに成分が排出されてしまう
- 遺伝的要因によりもともと薬の効果があらわれにくい
- 心理的要因により強いストレスや不安で睡眠薬等の効果が打ち消されてしまう
- 健康状態が優れずに根本的な問題を解決できない
普段から薬剤の効果があらわれにくいという方は、まずは睡眠専門のクリニックで自分に合う睡眠薬および睡眠導入剤を探してもらうことをおすすめします。
睡眠薬・睡眠導入剤を服用する前に、睡眠専門のクリニックに相談しよう
現在、不眠症といった睡眠トラブルに悩まされており、睡眠薬および睡眠導入剤を検討している方は、自分に合う薬剤を見つけるために、まずは睡眠専門のクリニックに相談することおすすめします。
多くの睡眠トラブルを解決してきた専門医に相談すれば、自身の悩みに適した睡眠薬の提案のほか、薬に頼らない対策などをアドバスしてもらえるでしょう。
よくある質問
睡眠薬や睡眠導入剤は用法用量を守り、医師の指示やパッケージ等に記載されている服用ペースを守りましょう。また、睡眠トラブルの改善には、睡眠薬や睡眠導入剤に頼らないことも大切です。依存しすぎないためにも、間隔を空けながら服用することをおすすめします。