【特徴が似てる?】睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係性は?
目次
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間にいびきや無呼吸によって十分な呼吸がされず、高血圧や糖尿病を発症してしまい、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気の引き金になりかねません。
睡眠時無呼吸症候群は、一見高血圧とは関係のない病気と思われがちですが、実際は密接に関係しているのです。そのため、睡眠時無呼吸症候群の治療=高血圧の治療につながる場合もあります。
家族のいびきや無呼吸が気になっている人、高血圧の薬を飲んでもコントロールが上手くいかない人は、睡眠時無呼吸症候群が関係しているかもしれません。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群と高血圧にはどのような関係があるのか、なりやすい人の特徴や共通点などについて解説していますので、参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群とは「寝ている間に呼吸が止まっている」こと
そもそも睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に呼吸が止まったり、浅い呼吸を繰り返したりすることで、体内の酸素量が低下し、さまざまな病気を引き起こします。
いびきをするのも呼吸が浅くなるのも、寝ている間に起こることであり、本人は無自覚であることが多いです。家族からいびきや無呼吸を指摘されている人は、いちど検査をおすすめします。 睡眠時無呼吸症候群については、以下の記事でも詳しく解説しているので参照ください。
睡眠時無呼吸症候群の人は高血圧を併発していることが多い
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が止まることで体内の酸素量が減少し、交感神経を刺激することで血圧が上がるとされています。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんのおよそ50%が、高血圧を併発していると言われていることからも、睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係性は深いと言えるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群が高血圧の原因になる理由について、次に詳しく解説します。
参考:
睡眠時無呼吸症候群と血圧
大規模なコミュニティベースの研究における睡眠呼吸障害、睡眠時無呼吸、および高血圧の関連。睡眠の心臓に関する研究
睡眠時無呼吸症候群の患者の約50%は高血圧を発症
睡眠時無呼吸症候群が高血圧を引き起こす原因とは?
睡眠時無呼吸症候群は、何らかの原因により舌が気道を塞ぐことで空気の流れが滞り、いびきや低呼吸、無呼吸などが現れます。
無呼吸や低呼吸により、体内では以下の反応が起こることで、高血圧になると言われていますので、詳しく解説します。
・無呼吸や低呼吸による酸素不足で交感神経が優位になる
・胸の中が陰圧になることで静脈が圧迫される
無呼吸や低呼吸による酸素不足で交感神経が優位になる
体内が酸素不足に陥ると、多くの酸素を取り込もうと脳が活性化し交換神経が優位になります。交感神経とは、身体が活発に動いているときに優位になる神経であり、体内では以下のような反応が見られています。
・脈拍や血圧、体温の上昇
・血管の収縮
・瞳孔の拡大
日中はもちろん、驚いたときや、ストレス・危険を感じたときなどに交感神経が優位に働くそうです。また、ヒトの身体は、呼吸をすることで、体内に溜まった二酸化炭素を酸素と交換しています。酸素は、ヒトが活動するために重要な物質であり、酸素が足りなくなると生命活動が維持できません。
そのため、呼吸が滞り体内の酸素量が減少すると、急いで酸素を取り込もうと脳が活発に働きます。脳が活発に働いているときは、交感神経が優位になっており、血圧や脈拍が上昇したり、気持ちが昂ったりするのです。
胸の中が陰圧になることで静脈が圧迫される
睡眠時無呼吸症候群では、気道が塞がることで空気を取り込もうとしても取り込めず、胸の中が陰圧になります。陰圧とは、周りの気圧よりも低い状態のことです。
陰圧になると、静脈に圧力がかかり血圧上昇の原因になると言われています。
上記で紹介した、「交感神経が優位になること」、「胸の中が陰圧になることで静脈に圧力がかかること」この2つが原因で、血圧が上昇すると言えるでしょう。
通常、寝ている間は血圧が安定していますが、睡眠時無呼吸症候群によって血圧が高い状態が常に続き、血管に負担をかけることで心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気を引き起こすのです。
参考:
高血圧と睡眠時無呼吸症候群の関係について
睡眠時無呼吸症候群による高血圧は降圧剤だけでは改善しない
「血圧が高いならば、血圧を下げる薬を飲めば改善するのでは?」と思う人も多いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群により高血圧を発症している場合は、薬を飲んでも血圧が下がらない場合があります。
その場合には、薬が効かないとはどういう状況なのか、その場合どのような治療が行われるのか、以下の項目について解説します。
・薬ではコントロールが難しい状態とは
・睡眠時無呼吸症候群の治療をして血圧をコントロールする
薬ではコントロールが難しい状態とは
血圧を下げる薬を3種類以上使用しても、目標とする血圧まで下がらない、薬の効果が見られない状態を「治療抵抗性高血圧」と言います。
高血圧には「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2種類があります。
種類 | 概要 | 考えられる原因 |
本態性高血圧 | ・高血圧患者の80~90%は本態性高血圧 ・原因がはっきり分かっていない | ・塩分の摂りすぎ ・肥満 ・運動不足 ・ストレス ・喫煙 など |
二次性高血圧 | ・高血圧患者の10~20%が二次性高血圧 ・何らかの原因が分かっている ・通常の降圧剤の投与より原因を取り除くことで治療改善が見込める場合が多い | ・腎臓の病気 ・ホルモンの関連した病気 ・薬の副作用 |
治療抵抗性高血圧は、本態性高血圧のうちのひとつに含まれます。睡眠時無呼吸症候群の患者が発症している高血圧に多くみられ、薬による血圧の下降が見られない場合は、原因となる睡眠時無呼吸症候群をしっかり治療していかなければなりません。
睡眠時無呼吸症候群の治療をして血圧をコントロールする
睡眠時無呼吸症候群による高血圧の場合は、薬によるコントロールよりも、原因となる睡眠時無呼吸症候群を治療することが最優先です。
元々高血圧を指摘されている人でなければ、睡眠時無呼吸症候群が改善することで自然と血圧も安定することが多いでしょう。
では、睡眠時無呼吸症候群はどのような治療方法があるのか、次に説明していきます。
睡眠時無呼吸症候群の4つの治療方法
睡眠時無呼吸症候群は、主に以下の4つの治療方法が行われます。
・治療方法①:CPAP
・治療方法②:マウスピースの装着
・治療方法③:生活習慣の改善
・治療方法④:レーザー治療
それぞれについて、詳しく解説します。
治療方法①:CPAP
CPAPとは、「持続陽圧呼吸療法」と言われ、鼻にマスクを装着することで空気を送り込み、体内に酸素を供給する治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法として、選択されることが多く、主に中等症以上の患者さんに適用されています。
しかし、寝ているときにマスクを装着しなければならないこと、正しい位置に装着しないと空気漏れが発生することなど、慣れないうちは寝つきにくいこともあるでしょう。
とはいえ、CPAPを装着することで無呼吸が改善し、体内の酸素量が安定することで起床時の倦怠感や日中の眠気が改善します。
なかには装着した翌日から効果を感じる人もいるとのことです。
治療方法②:マウスピースの装着
マウスピースは、舌が気道に落ちて空気の通り道を塞がないようにする目的で使用されます。
主に、軽症の睡眠時無呼吸症候群の治療に適用されることが多いです。 マウスピースは上下一体型と、分離しているものがあり、それぞれに特徴があります。
特徴 | |
上下一体型 | ・保険適用で比較的安価で作れる ・小型で持ち運びしやすい ・装着すると口が開かなくなる ・装着時に違和感がある ・会話したり、飲み物を飲んだりできない |
上下分離型 | ・上顎と下顎が離れるため、会話や飲水に支障がない ・一体型と比較すると違和感が少ない ・保険適用外となるため値段が高額 |
CPAPと比較すると、違和感が少なく慣れやすい治療と言えるでしょう。中等症以上の人でも、CPAPに慣れずに治療が進まない人や、CPAPが合わない人などに使用されています。
参考:
マウスピースによる治療
治療方法③:生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群の原因は、肥満やストレス、飲酒などの生活習慣によるものが多いです。
生活習慣を改善すれば、睡眠時無呼吸症候群が改善する可能性が高いため、医師と原因を追究して生活習慣の改善を目指しましょう。
主な生活習慣の改善は、以下の通りです。
理由 | 具体な対策 | |
減量 | ・肥満を指摘されている場合はあごの周りの脂肪が気道を圧迫している可能性がある ・あごの周りの脂肪を落とすことで気道の閉塞を防ぎ、睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できる | ・バランスのよい食事 ・3食規則正しく食べる ・腹八分目に抑える ・ウォーキングやジョギングなどの運動を取り入れる ・通勤、通学時、駅のエスカレーターの利用を階段にする ・バスを使用していたところを自転車にかえる |
禁酒 | ・筋肉の緊張をゆるめ、舌が気道を塞いでしまう | ・寝る前の飲酒は控える ・飲酒する場合は寝る4時間前までに済ませる |
禁煙 | ・気道の炎症や腫れにより空気の通り道を塞いでいる ・ニコチンの影響で寝つきが悪くなる | ・禁煙をする ・禁煙外来に通いサポートを受けながらの禁煙も効果的 |
上記に挙げたCPAPやマウスピースは、気道の閉塞を防ぐための対策であり、根本的な解決は生活習慣の見直しにあると言えます。
自分に合った生活習慣の改善方法を探してみましょう。
参考:
睡眠時無呼吸症候群に関する生活習慣の改善について
睡眠時無呼吸症候群と飲酒の関連とは?症状が悪化する理由と飲酒時の注意点
治療方法④:レーザー治療
いびきの音が気になる人には、レーザー治療も有効です。
のどにある軟口蓋や口蓋垂が元々大きい人は、いびきをかきやすかったり、睡眠時無呼吸症候群になりやすかったりします。
そのような場合は、レーザー治療で、大きい軟口蓋や口蓋垂を小さくすることで改善が見込める可能性があります。
自分の睡眠時無呼吸症候群に適応されるかは医師の判断によるため、いちど受診して相談してみるとよいでしょう。
参考:
いびき・睡眠時無呼吸症候群の治療ならいびきメディカルクリニック
睡眠時無呼吸症候群と高血圧になりやすい人の特徴は似ている
睡眠時無呼吸症候群や高血圧は、生活習慣病の一種と言われても過言ではありません。高血圧は睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされることもありますが、睡眠時無呼吸症候群とは関係のない高血圧が併発している可能性があります。高血圧は、睡眠時無呼吸症候群と同様の生活習慣の悪さに起因することがあるためです。そのため、睡眠時無呼吸症候群と高血圧になりやすい人の特徴は、似ているといわれています。
睡眠時無呼吸症候群の場合は、病気や身体の構造によるものもあるため一概には言えませんが、ほとんどの人が肥満や飲酒、ストレスなどの生活習慣による影響が大きいと言えます。
睡眠時無呼吸症候群と高血圧になりやすい人の特徴は、以下の通りです。
・睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点①肥満
・睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点②飲酒
・睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点③ストレス
それぞれについて、詳しく解説します。
参考:
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われやすい人の特徴
高血圧になりやすい性格や特徴がある?
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点①肥満
肥満とは、BMI(体格指数)が25以上の人を言います。BMIを計算する方法は、以下の通りです。
体重(Kg)÷【身長(m)×身長(m)】=BMI
例えば、身長160cm、体重70Kgの人のBMIは【70÷(1.6×1.6)=27.34・・・】
となり、BMIが27であることが分かります。自分のBMIがどれくらいなのか、計算してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群では、肥満によって首に脂肪がつき、気道を閉塞することが多いため、肥満の人に睡眠時無呼吸症候群の患者が多いとされています。
一方、肥満によって引き起こされる高血圧では、以下の理由が挙げられます。
・過食による塩分の摂りすぎ
・過食によって起こる過剰なインスリンの分泌による交感神経への刺激
・内臓脂肪が多いことで血液量が増え、身体の先端にめぐる血管に負担増大
これらの理由から、肥満の人は高血圧の人が多いとされています。
肥満を指摘されている人は、睡眠時無呼吸症候群と高血圧を併発している可能性が高いと言えるでしょう。
参考:
肥満により高血圧を起こすメカニズム
高血圧|減酒.jp‐大塚製薬
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点②飲酒
飲酒をすると、筋肉がゆるみ、舌が気道を圧迫することで睡眠時無呼吸症候群を発症します。
一方、高血圧と飲酒の関連ははっきりとした原因が分かっていない部分もあるようですが、以下のメカニズムが関連しているようです。
・飲酒による交感神経の刺激
・血圧を上げるようなホルモンの分泌
・カルシウムやマグネシウムなどの電解質の異常
以上のことから、飲酒は睡眠時無呼吸症候群と高血圧に大きく関わっていると言えるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の共通点③ストレス
ストレスは、交感神経を刺激し、血圧を上昇させます。
睡眠時無呼吸症候群により、眠りが浅くなることで、日中の眠気や集中力の低下、倦怠感などの自覚症状があると、さらにストレスが溜まります。
日常のストレスだけでなく、睡眠時無呼吸症候群によって発生したストレスが、高血圧を引き起こす原因のひとつになるでしょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係性について解説しました。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんのおよそ半数が、高血圧を併発しているというデータもあり、密接に関わっていると言えるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群が原因による高血圧は、CPAPやマウスピースなどを使用して寝ている間の無呼吸を改善すること、生活習慣を見直して根本的な原因を解消することが重要です。
いびきメディカルクリニックのレーザー治療であるパルスサーミアは、痛みを伴わないいびきの治療ですが、その効果は高いです。従来のレーザー治療は、表面を傷つけることがあり痛みが強い場合がありましたが、パルスサーミアのレーザー治療は、表面を傷つけず、かつ深部まで引きしめることから、痛みなくいびき改善の効果が大きいとされています。
いびきについて悩んでいる人は、いびきメディカルクリニックにご相談ください。
【よくある質問】
Q.睡眠時無呼吸症候群と高血圧は関係がありますか?
A.はい、関係が深いです。睡眠時無呼吸症候群により寝ている間に低呼吸や無呼吸を繰り返すことで交感神経が優位になり、血圧が上がるからです。
Q.薬を飲んでも血圧が下がらないのは、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いですか?
A.3種類以上の降圧剤を服用しても血圧がコントロールできない状態を「治療抵抗性高血圧」といいます。原因は塩分の摂りすぎや、運動不足などの生活習慣もありますが、なかには睡眠時無呼吸症候群が影響している可能性も考えられます。かかりつけ医と相談して、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみましょう。