睡眠時無呼吸症候群って何?原因から治療までをご紹介。
目次
眠っているときに、呼吸が止まってしまったり呼吸が弱くなってしまったりする「睡眠時無呼吸症候群」は、放置しておくと生命をも危機にさらすことになるものです。この睡眠時無呼吸症候群は、決して珍しいものではなく、多くの人が患っているものです。
自分では気づきにくい症状だからこそ、周りの人が睡眠時無呼吸症候群について正しく理解し、対応を促さなければなりません。
そこでここでは、この睡眠時無呼吸症候群を取り上げて
・睡眠時無呼吸症候群とはどんなものか
・睡眠時無呼吸症候群のメカニズム
・睡眠時無呼吸症候群によって起こること
・睡眠時無呼吸症候群の治療方法
について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに呼吸が止まる病気をいう
睡眠時無呼吸症候群(“Sleep Apnea Syndrome”、SAS。以下、特筆すべき事情がない限りは漢字表記に統一する)とは、「眠っているときに、呼吸が止まってしまったり、呼吸が弱くなってしまったりする症状」を指す言葉です。
睡眠時無呼吸症候群は、10秒以上にもわたって呼吸が止まってしまう「無呼吸」と、呼吸が非常に弱くなってしまう「低呼吸」の2つに分けられています。このいずれかの症状が、1時間に5回以上繰り返されると、「睡眠時無呼吸症候群である」と判断されます。
睡眠時無呼吸症候群は、「眠っているときに起こるもの」です。
そのため、基本的にはこれを患っている本人には自覚症状がありません。重症である人でも気づかないことが多いため、対応が遅れてしまうのがこの症状の恐ろしさです。
睡眠時無呼吸症候群のメカニズム
睡眠時無呼吸症候群には「閉塞性睡眠無呼吸タイプ」と「中枢性睡眠無呼吸タイプ」があります。ただ後者は群全体の数パーセント程度にしかすぎませんから、ここでは前者のメカニズムについてのみ紹介していきます(以下同)。
私たちが取り込んだ空気は気道を通って体内に入っていきます。しかし睡眠時無呼吸症候群では、この「空気の取り込み」が上手くいきません。なぜなら睡眠時無呼吸症候群を患っている人の場合は、空気が通るべき喉の気道がなんらかの原因(特に肥満)によって塞がっているからです。
なお睡眠時無呼吸症候群ではしばしば強烈ないびきを伴いますが、これは狭くなってしまった気道を空気が通ろうとする時に起こるものです。
参考:原因とメカニズム|睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは|睡眠時無呼吸なおそう.com – 睡眠時無呼吸症候群のポータルサイト
睡眠時無呼吸症候群に陥るとどんなことが起こる?
睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに起こるものであるため、この症状を患っている本人が自覚症状を持つことは非常に難しいといえます。ただ、睡眠時無呼吸症候群が原因かどうかは判断がつかないものの、
・頭痛や倦怠感に悩まされやすくなる
・強烈で抗いがたい眠気にさいなまれることもある
・不眠症に悩まされる
・命に関わる合併症を引き起こす原因になる
などの症状が起きることで、問題が起こっていることを自覚できるようになる可能性はあります。
1つずつみていきましょう。
頭痛や倦怠感に悩まされやすくなる
本人に自覚症状が乏しかったとしても、睡眠時無呼吸症候群を患うと、本来脳に届けられるべき酸素の量が少なくなります。その結果として、脳は酸素不足の状況に悩まされる可能性が高くなります。
脳の酸素が足りなくなった場合、頭痛に悩まされたり、しっかり睡眠時間を確保しているにも関わらず倦怠感が抜けなかったりといった悩みを抱えやすくなります。なお頭痛は特に起床時にひどく、倦怠感とともに集中力の低下が起きることもよくあります。
また、寝起きがすっきりせず、なかなかベッドから出られなかったり、目覚めが悪くなってしまったりする可能性も高いといえます。
強烈で抗いがたい眠気にさいなまれることもある
睡眠時無呼吸症候群を患うと、強烈で抗いがたい眠気が突然襲ってくる可能性もあります。突然意識を失ってしまうように眠りに落ちてしまうことすらあります。
この「強烈で抗いがたい眠気」は、非常に恐ろしいものです。仕事中や勉強中の居眠りはもちろん、運転をしている最中においてさえ突然出てくる可能性があるものだからです。
その結果、「睡眠時無呼吸症候群で居眠りをしてしまい、運転している車が暴走して人をはねてしまった」などのような状況に陥ることもあるのです。
痛みを伴わず自覚症状もないため治療に二の足を踏む人もいる睡眠時無呼吸症候群ですが、放置しておくと「加害者」になる可能性があることを忘れてはいけません。
不眠症の原因になることも
睡眠時無呼吸症候群は、不眠症の原因にもなるものです。「眠れないこと」は人間にとってもっともつらいことのうちのひとつですが、睡眠時無呼吸症候群が原因となる不眠症は決して少なくありません。
さらに、睡眠薬を使っても改善しない不眠症のうちの実に70パーセントは、この睡眠時無呼吸症候群を原因にしているともいわれています。また睡眠時無呼吸症候群による不眠症の場合は、一般的な睡眠薬では症状が改善するどころか悪化することもあり得ます(ただし睡眠時無呼吸症候群でも使える睡眠薬はあります。たとえば、非ベンゾジアゼピン系に分類されるマイスリーなどがそれにあたります)。
命に関わる合併症を引き起こす原因にもなりうる
睡眠時無呼吸症候群は、放置しておくと非常に恐ろしい症状を招くことがあるものです。高血圧や糖尿病と深く関わる「肥満」は睡眠時無呼吸症候群の主な原因のうちのひとつですが、これは生活習慣病との関わりも非常に深いものです。
睡眠時無呼吸症候群を放置しておくことで、心臓や脳などの、人間にとって非常に重要な器官に関係する病気がもたらされる可能性が高くなります。睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳卒中・脳梗塞などを引き起こす原因となってしまう症状なのです。心筋梗塞や脳卒中・脳梗塞は死亡に直結するものですし、仮に助かったとしても重い後遺症を引き起こす可能性が高いものでもあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
上記で睡眠時無呼吸症候群がもたらすさまざまな害について解説してきました。ただ睡眠時無呼吸症候群は研究が進んでいる症状であるため、その対策や治療方法もある程度確立されています。そしてその対策・治療方法は多岐に及び、自分で心がけて行うことができるものもあれば、薬を使った方法、さらに機器(機械)を使った方法まであります。
実際にどの対応方法を選ぶか(あるいは複数の方法を組み合わせるか)の決定は、睡眠時無呼吸症候群の重症度などによって異なるため医師と相談しながら行わなければなりません。
しかしどんな対策・治療方法があるかを事前に知っておくことは、睡眠時無呼吸症候群の解決に役立つでしょう。
ダイエットと姿勢の変更
上でも軽く触れましたが、睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつは「肥満」です。睡眠時無呼吸症候群を患っている人のうち、実に6割以上~7割の人が肥満体形であるとされています。このため、睡眠時無呼吸症候群の改善にはダイエットが極めて有用です。ダイエットを行うことで喉周りの脂肪を減らし、気道の閉塞を解消することができるからです。
また、睡眠時無呼吸症候群はあおむけの状態で寝ることで悪化します。このため、横向きで眠れるように調整することも重要です。テニスボールなどをパジャマの背中部分に縫い付けることで、あおむけで眠ることを防ぎ、自然に横向きで眠ることができるようになります。この方法は、特に軽症の人に有用です。
喫煙や飲酒等の生活習慣の改善
喫煙は、睡眠時無呼吸症候群の危険因子のうちのひとつです。日常的に喫煙することで血中に含まれる酸素の量が低下してさらに脳に酸素がいきわたりにくくなるからです。また、喉が炎症を起こして、空気が通りにくくなるなどの問題もあります。喫煙は百害あって一利なしといわれますから、速やかに喫煙(難しければ節煙)を行うことが望ましいといえます。
飲酒もまた、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性がある行動です。アルコールは睡眠導入こそ容易にしますが、眠りが浅くなるうえ、喉の筋肉を緩めてしまうため気道を防ぎやすくなってしまうのです。大量のアルコール摂取はもちろん、睡眠前に少量のアルコールをとることも控えたいものです。
投薬での治療
睡眠時無呼吸症候群は、薬を用いることで改善することもあります。投薬での治療は、
・呼吸を楽にするためのスプレー
・呼吸中枢を刺激する薬
などがよく選ばれます。
ただこれらの利用によっても、睡眠時無呼吸症候群の重症度や体の状態によっては症状が改善しない場合もあります。
なお睡眠時無呼吸症候群に限ったことではありませんが、薬を使う場合は必ず一度医師に相談、検査するようにしてください。また一時的に症状が改善したように感じられた場合であっても、自己判断で減薬・断薬を行うことは極めて危険です。薬の使用を再考したい場合は必ず医師に相談するようにしてください。
睡眠時無呼吸症候群対策の装置「CPAP」
睡眠時無呼吸症候群対策のひとつとして、「CPAP」というものがあります。
CPAPは“nasal Continuous Postive Airway Pressure”の略称であり、日本語に訳すと「経鼻的持続陽圧呼吸両方装置」となります。これは圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込むことで気道の詰まりを解消するための機械です。
副作用はほとんどみられませんが、人によっては喉の乾きや不快感、粘膜の乾燥などに悩まされる可能性があります。また毎日手入れし、定期的にフィルターを交換する必要があります。
なおこの装置は、条件をクリアすれば保険適用内で手に入れられます。「自費で手に入れられる」として販売しているサイトなどもありますが、まずは医師の診察を受けるようにしてください。
外科手術により根本から改善
睡眠時無呼吸症候群を解消するための手術の代表例として、「口蓋などの一部を切除する」というものがあります。「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術」と呼ばれるこの手術は、睡眠時無呼吸症候群に悩む人のおよそ半分に効果があるとされています。しかし、手術を行う為痛みを伴ったり、ダウンタイムが発生してしまいます。
切開手術で気道を切り広げる為、術後数週間は食べ物が飲み込みにくく、異物感を感じたりすることがあります。
上記の様なデメリットもありますが、最新のレーザー治療であるパルスサーミアは、上記のデメリットを軽減しながら治療を行うことが出来ます。
切開手術を行わず、レーザーによって「口蓋垂」や「軟口蓋」を引き締めます。その為、出血する事が無く、痛みが少ないという特徴があります。
睡眠時無呼吸症候群の治療についてより詳しく知りたい方は下記コラムをご覧ください。
まとめ
ここまで、睡眠時無呼吸症候群の内容やメカニズム、睡眠時無呼吸症候群によって起きること、そして睡眠時無呼吸症候群の対策について解説してきました。
睡眠時無呼吸症候群は一人ひとりで症状が違います。また、「睡眠時無呼吸症候群だと思っていたが、原因は違うところにあった」などの可能性もありますので、必ず医師の診察・検査を受けてください。また医師に対処方法などを指示された場合は、独断でその指示を変更したり破ったりすることは避け、必ず医師に相談するようにしてください。
いびきメディカルクリニックでは、新宿院、立川院、銀座院、名古屋院と駅から近い立地ですので、お気軽にご来院頂けます。
「睡眠時無呼吸症候群かも?」と思われた際は、ぜひ一度お問い合わせください。
【よくある質問】
Q. 睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気?
A. 寝ているときに、呼吸が止まったり、呼吸が弱くなったりする病気です。肥満などによって気道がふさがれることが原因で起こることが多い症状であり、多くの場合本人には自覚症状がありません。また、睡眠時無呼吸症候群の場合は少なくない割合で大きないびきなどを伴うことがあります。
Q. 睡眠時無呼吸症候群を患った場合に起きる可能性のあることとは?
A.倦怠感や頭痛をもたらすことがよくあります。また強烈で抵抗不能な眠気に悩まされて、「絶対に寝てはいけない状態」で眠りに落ちてしまうこともあります。集中力の低下や不眠症の原因となるうえ、重症化してしまうと心筋梗塞や脳卒中・脳梗塞などの命に関わる病気の原因となることもあります。