【悪循環】睡眠時無呼吸症候群によるストレスとその原因について
目次
睡眠時無呼吸症候群を発症すると、ストレスからうつ病などの精神疾患を併発するケースがあります。
ある調査では睡眠時無呼吸症候群の患者は、うつ病を発症するリスクが2.6倍にもなると報告されています。
睡眠状態を悪化させないためにも、ストレスを減らして精神疾患にかからないように心がけることが大切です。
今回は、睡眠時無呼吸症候群がなぜ心身にストレスを与えるのか、ストレスとうつ病の関係などについて解説していきます。
自分でできる睡眠時無呼吸症候群の改善方法も紹介するので、睡眠の質の低下によるストレスを減らすために、ぜひ最後までご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群により心身が受けるストレス
睡眠時無呼吸症候群はいびきや無呼吸が主な症状として知られていますが、無呼吸やいびきなどの症状から心身が受けるストレスの中には、見逃せない影響があります。ここでは、睡眠時無呼吸症候群によるストレスの種類を紹介します。
いびきや無呼吸による中途覚醒で受けるストレス
いびきや無呼吸が発生すると、いびきの音や息苦しさから睡眠の質が低下して、覚醒してしまうことがあります。
その結果、夜中に何度も目覚めてしまい、ぐっすりと眠れずイライラするといったストレスを感じてしまうのです。
人間はストレスを感じると、身体を休ませるために全身の筋肉が緩み、喉周辺の筋肉も弛緩してしまいます。気道が塞がれ、いびきが悪化するので、悪循環となってしまうのです。
中途覚醒をすると「早く眠らないといけない」というプレッシャーから、再入眠できなくなるケースがあります。
再入眠までに30分~1時間かかると「入眠障害」とされ、不安や緊張を感じるようになります。入眠障害は、不眠症の中でも最も多い症状です。 眠りたくても眠れない状況は想像以上にストレスがかかるため、中途覚醒したとしてもリラックスして再入眠することが大切です。
日中の眠気によるストレス
睡眠時無呼吸症候群を発症すると、自分では気が付かないうちに睡眠の質が下がるため、日中に眠気を感じるようになります。日中の眠気は、仕事にもプライベートにも大きな影響があるため注意が必要です。
例えば、仕事中に眠気を感じると判断力や集中力が低下して、結果を出すのが難しくなります。強い眠気から居眠りをしてしまい、上司から叱責されるケースもあるでしょう。睡眠時無呼吸症候群による日中の眠気は仕方がない面があるため、評価を下げないためにも、事前に上司に相談をするといいでしょう。
また、強い眠気によって仕事が上手くいかないイライラから、プライベートで家族にきつい態度を取ってしまうケースもあり、自宅でも落ち着けない状態になります。 このような状態になると仕事でも家庭でも休まるときがないため、さらにストレスを感じて、寝付きが悪くなるといった、悪循環が起こります。
慢性的な疲労感によるストレス
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質が低下して身体がしっかりと回復できなくなるため、日中の眠気だけでなく疲労感を覚えることも特徴の一つです。
目が覚めた瞬間から疲労感を感じるため、行動する意欲が湧かず、会社へ行くことにストレスを感じます。
一般的な疲労は体を休めれば軽減しますが、睡眠時無呼吸症候群による疲労は睡眠の質の低下が原因のため、休んでも回復しないので注意が必要です。
参考:
(大阪回生病院)、(不明)、睡眠時無呼吸症候群の治療~適切な治療を見つけるために~
(EPARK歯医者)、(2022.08.22)、いびきがうるさい!ストレスになる前に試したい対処法4つ
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の原因には、閉塞性(OSA)と中枢性の2種類があります。ここでは、それぞれの原因について解説します。
閉塞性(OSA)の原因
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何らかが原因となり、気道が塞がってしまうことで起こります。一般的に睡眠時無呼吸症候群と言われてイメージするのが閉塞性であり、実際に診断を受けるのもほとんどが閉塞性です。
肥満や下あごが小さい・扁桃腺が大きいなど、身体的な特徴により気道が塞がることで発症します。特に睡眠中は筋肉を休ませるために、喉周辺の筋肉も力が抜けて緩むので、気道が狭い状態になりやすいのです。筋肉が緩んでいる状態で身体的な特徴により気道がさらに狭くなると、いびきや無呼吸を引き起こします。
また、飲酒による喉の筋肉の弛緩や喫煙による喉の腫れなどは、症状を悪化させる要因の一つです。肥満や飲酒・喫煙など、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は生活習慣と密接な関係があります。高血圧や糖尿病・心血管系の病気になる確率も上がるため、治療と同時に生活習慣を改善することも大切です。
中枢性(CSA)原因
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸中枢が異常を起こして脳からの指令が届かなくなることが原因です。
閉塞性であれば呼吸をしようとするため、いびきをかきますが、中枢性はそもそも身体が呼吸をしようとしないためいびきをかきません。閉塞性であればいびきにより睡眠時無呼吸症候群を疑うことができますが、中枢性は分かりやすい症状がないため、病気に気が付くのが遅れ、症状が悪化してしまうケースがあります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群と深い関係にあるのが、心筋梗塞や心筋症などの心不全です。心臓の働きが弱まると血液中の二酸化酸素濃度が呼吸中枢まで十分に遅れなくなり、その結果、呼吸中枢が異常を起こします。 心不全を発症している患者の約3割が中枢性睡眠時無呼吸症候群を併発するとの報告があり、放置すると不整脈や心筋梗塞などで突然死する可能性があります。
参考:
(矢野 大仁)、(2022/04/05)、【医師監修】睡眠時無呼吸症候群の対策|原因や症状・治療方法まで詳しく解説
(東京予防クリニック)、(不明)、睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群によるストレスとうつ病の関係
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の患者が感じるストレスとうつ病の関係について解説します。
精神疾患があると睡眠時無呼吸症候群になりやすい
睡眠時無呼吸症候群のストレスによりうつ病を発症する方もいますが、反対にうつ病などの精神疾患から睡眠時無呼吸症候群を発症する方もいます。
うつ病になるメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、セロトニンの減少が要因の一つとなっていると考えられています。
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、脳内の神経伝達物質の一つで、心と身体を安定させる役割があります。
また、セロトニンは、睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」を体内で分泌する際の材料になります。そのため、日中にセロトニンの分泌量が少ないと、メラトニンの分泌量も減少して睡眠障害を引き起こすのです。
その他にも、うつ病患者は活動する気が起きず、身体を動かす時間が減るため、肥満となるリスクが増えます。抗不安薬は喉の筋肉を弛緩させる副作用もあり、これらが原因となりうつ病患者は睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクが高くなるというわけです。
睡眠時無呼吸症候群の治療が精神疾患の改善にも繋がる
睡眠時無呼吸症候群を治療することにより、併発していた精神疾患が改善したという調査があります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸により低酸素状態となり睡眠の質が低下することが特徴です。睡眠の質が低下すると、精神的なバランスが崩れて精神疾患を引き起こします。 睡眠の質が高まれば精神的なバランスが保たれるため、睡眠時無呼吸症候群の治療は精神疾患の改善にも繋がると言われています。
参考:
(けいクリニック)、(2021.02.16)、睡眠時無呼吸症候群と精神疾患
(すぎもと医院)、(不明)、うつ病と睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群を改善する方法
閉塞性の睡眠時無呼吸症候群は、通院しての治療だけでなく自分で改善する方法もあります。重症の場合は医師に検査してもらう必要がありますが、症状が軽い方は以下の方法を試してみてください。
運動をして減量に取り組む
肥満になると喉の筋肉の周りに脂肪がついて、気道が狭くなります。気道が狭くなった状態で眠りにつくと、筋肉弛緩により、さらに気道が塞がれて、いびきや無呼吸の原因となります。
運動や食事療法などで減量すれば、気道の周りの脂肪が落ちるため、いびきや無呼吸の症状が改善されます。
これまで運動をしていなかった方が急激に動くと、怪我をするリスクが高まるので、まずはウォーキングなどの適度な運動を心がけましょう。ウォーキングなどの軽い運動でも継続することにより筋肉量が増えて、身体の代謝が上がるため、体重が落ちやすい身体になります。
また、運動と同時に食事にも気を使うことが大切です。
食物繊維やビタミン・ミネラルなどの栄養素をバランスよく摂取して、健康的に減量するようにしましょう。体重を減らしたいからといって、食べる量を減らし過ぎてしまうと体調を崩す可能性があります。 また、睡眠時無呼吸症候群の患者は高血圧にもなりやすいので、塩分を控えめにするよう意識しましょう。
うつ病の薬の服用を抑える
うつ病の方が服用する抗うつ剤には、満腹中枢を刺激するヒスタミンをブロックするものが多くあります。ヒスタミンが働かなくなると、食事をしても満腹感が得られないため、食べる量が増えてしまいます。
うつ病の症状が重くて抗うつ剤を手放せない場合は仕方がないですが、症状が軽くなってきたら医師と相談して薬の量を減らすようにしましょう。
抗うつ剤だけでなく、睡眠薬も睡眠時無呼吸症候群に悪影響を与えます。睡眠薬は喉周辺の筋肉を弛緩させるため、気道が塞がりやすくなるだけでなく、低酸素状態になった場合に呼吸の回復が遅れるリスクもあります。
睡眠障害により睡眠薬がないと眠れない方もいるので、こちらも医師とよく相談したうえで服用してください。
禁煙する
タバコに含まれているニコチンなどの化学物質は、気道に刺激を与え炎症を引き起こすことがあります。炎症を起こした気道は、むくんで幅が狭くなるため、いびきや無呼吸の症状が出やすくなります。
また、ニコチンには覚醒作用があり、タバコを吸ってから10秒で脳に到達すると言われています。ニコチンの覚醒効果が切れるには1時間かかるため、睡眠に与える影響は大きなものです。
タバコには血管を収縮させる作用もあり、血圧や心拍数が上昇して運動しているときと同じような状態になります。そのような状態で眠りについても睡眠の質が下がり、身体の疲れが取れなくなってしまうのです。 睡眠時無呼吸症候群によるストレスで、ついついタバコを吸いたくなってしまいますが、まずは本数を減らすことから始めてみましょう。
鼻呼吸を心がける
口呼吸をすると口が開くため、舌が喉側に移動します。その結果、気道が狭くなりいびきや無呼吸を引き起こす要因となります。
また、口呼吸は空気中のホコリや雑菌をそのまま体内に取り入れてしまうので、風邪やウイルス感染にかかりやすくなるデメリットもあります。
寝ている間に口呼吸になってしまう原因の一つが鼻づまりです。鼻づまりにより鼻から十分な空気を取り入れられないと、無意識のうちに口で呼吸するようになります。
睡眠時無呼吸症候群の主流な治療法であるCPAPは、機械で圧力をかけて鼻から空気を送り込みますが、鼻づまりがあると効果が減少します。 鼻づまりを無くせば自然と鼻呼吸になるので、CPAPによる症状の改善が期待できます。このように、鼻呼吸には多くメリットがあるため、口呼吸をしている方は鼻呼吸をするように心がけましょう。
参考:
(おいしい健康)、(2022.03.18)、睡眠時無呼吸症候群の方へ向けた食事支援機能を提供開始
(医療法人社団グッドスリープ)、(2010.06.18)、喫煙・禁煙について
まとめ
睡眠時無呼吸症候群を発症すると、中途覚醒や日中の眠気・疲労感などにより心身がストレスを受けます。
ストレスにより睡眠の質が低下すると、入眠障害など睡眠時無呼吸症候群以外の睡眠障害を引き起こすリスクもあります。
睡眠時無呼吸症候群によりストレスを長期間受けると、うつ病などの精神疾患を併発する可能性が高くなります。それは睡眠の質が低下することにより、精神的なバランスが崩れてしまうためです。うつ病により生活習慣が悪化して肥満が進むこともあるため、睡眠だけでなく精神状態もケアする必要があります。
睡眠時無呼吸症候群が重症の状態であれば病院で医師の診察を受ける必要がありますが、軽症であれば自宅でできる改善法も有効です。 特に肥満の方は減量することで、気道が塞がる原因となる脂肪を取り除けるため大きな改善を見込めます。その他にも禁煙や鼻呼吸を心がければ、気道の状態が良くなるため睡眠時無呼吸症候群の症状も改善されるでしょう。
【よくある質問】
Q. 睡眠時無呼吸症候群によるストレスの原因は?
A. いびきや無呼吸による中途覚醒や日中の眠気・疲労などにより心身がストレスを感じます。ストレスを受け続けるとうつ病を併発するリスクがあるため、早めに睡眠時無呼吸症候群の症状を改善することが重要です。
Q.睡眠時無呼吸症候群を改善する方法は?
A. 肥満の方は減量をすると喉の周りの脂肪が落ちて、気道が塞がりにくくなります。また、禁煙や鼻呼吸で気道周辺の状態を良くすることも有効です。うつ病患者の方は抗うつ剤が悪影響を与えることがあるため、うつ病の症状が改善したら医師と相談しながら薬を減らしていきましょう。