【いびきなしだと正常?】いびきをかかない睡眠時無呼吸症候群の危険性について
目次
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も無呼吸状態に陥ることで、慢性的な睡眠不足や日中の眠気などを引き起こす、睡眠障害のひとつです。この疾患は、家族やベッドパートナーに指摘されるほどの大きないびきを睡眠中にかくのが特徴ですが、まれにいびきを一切かかない睡眠時無呼吸症候群があります。 この記事では、どうしていびきを一切かかないのか、そのメカニズムをわかりやすく解説します。あわせて、いびきをかく無呼吸症候群との違いや、危険性、そして早期発見するためのサインについても紹介するので、自身や家族に症状が見られる人は、ぜひ参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群って何?
まずは、睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気なのか、基本情報について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、さまざまな原因によって気道が狭くなることで呼吸が浅くなったり、止まったりする疾患です。発症すると、睡眠中に何度も無呼吸状態に陥るため、脳は足りない酸素を補おうと覚醒し、その度に睡眠が分断されます。その結果、次のような症状が現れ、日常生活に支障をきたすようになります。
<寝ている間>
・常にいびきをかく
・いびきがよく止まる
・たびたび呼吸が止まる
・息苦しさを感じて夜中に何度も起きることがある
・寝汗をかく
・尿意で目が覚めることがある
<起きている間>
・しっかり寝たはずなのに、耐え難い眠気に襲われる
・熟睡感がない
・強い倦怠感がある
・仕事に集中できない
・居眠りをすることがある
参考:
チェックリスト|睡眠時無呼吸症候群チェックリスト
I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
多くの場合いびきをかく
この疾患の大きな特徴は、睡眠中は常に大きないびきをかくことです。いびきは、次のようなメカニズムで発生します。
1.寝ている間は脱力するため、気道や舌の周りの筋肉が重力によって喉の奥に落ち込む
2.気道が狭くなり、空気が通る十分なスペースがなくなる
3.呼吸によって気道の粘膜がふるえ、いびきが発生する
いびき自体は、健康な人でも飲酒をした後や疲労した後などに一時的にかくことがあります。ですが、無呼吸症候群の人は毎晩のようにいびきをかくのが特徴です。
そして無呼吸状態に陥っている人は、睡眠中に呼吸が止まっているにもかかわらず、本人にその自覚はありません。そのため、家族やベッドパートナーにいびきを指摘され、ようやく気づくケースがほとんどです。症状に心当たりのある人は、下記の記事で紹介されている「睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック」を行ってみてください。
参考:
チェックリスト|睡眠時無呼吸症候群チェックリスト
I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
どんな人が「いびき」をかきやすい?
いびきをかかない睡眠時無呼吸症候群もある?
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に覚醒が繰り返されることで、慢性的な睡眠不足に陥ってしまう疾患です。そして、睡眠中は第三者に指摘されるほどの大きないびきをかきます。しかし、まれにいびきをかかないのに無呼吸状態に陥り、睡眠が障害されるケースがあります。それが、中枢性睡眠時無呼吸症候群です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群とは
中枢性睡眠時無呼吸症候群とは、呼吸を調整する脳の働きが何らかの原因で低下することによって、睡眠中の呼吸が正常に働かなくなり、発生する無呼吸症候群です。
本来、睡眠中の呼吸は脳にある呼吸中枢によってコントロールされ、何も意識しなくても口や鼻から空気を吸ったり吐いたりして呼吸が維持されています。ですが、この呼吸中枢が心臓や脳の異常によってうまく反応できなくなると、コントロールを失い、呼吸が制御できなくなってしまうのです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群との違い
前章で紹介した、気道が狭くなることで発生する無呼吸症候群は「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれており、無呼吸症候群に罹患している人の約90%の方がこちらのケースに該当します。
この閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に舌や喉の筋肉が重力によって落ち込み、気道を塞いでしまうことで無呼吸になります。つまり、気道の「閉塞」が原因であり、狭くなった気道を無理矢理空気が通るため、患者はほぼ毎回いびきをかきます。
これに対し、中枢性睡眠時無呼吸の原因は、呼吸に関する指令を出している脳にあります。そのため、中枢性の場合は気道の閉塞が発生しないため、いびきを伴いません。これが、閉塞性と中枢性の決定的な違いです。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因となる疾患
では、どうして呼吸中枢に異常が起こってしまうのでしょうか?原因のひとつは、心不全です。心不全とは、心臓の働きが低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる疾患です。
呼吸の制御を司る呼吸中枢は、心臓から血液によって運ばれる二酸化炭素などに反応して、呼吸の命令を出すという仕組みで動いています。ところが、心臓に異常が起こって血流が悪くなると、二酸化炭素を十分に送れなくなり、呼吸中枢がうまく反応できなくなってしまうのです。
これまでのデータでは、心不全に罹患する約3割の患者が、中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症していることがわかっています。治療せずに放置すると、不整脈や心筋梗塞を引き起こして突然死につながることもあるため、早期治療が大変重要です。
ほかにも、脳卒中などにより脳の呼吸中枢そのものにダメージを負い、呼吸をコントロールできなくなる場合や、腎不全に合併する場合もあります。その他、高地に移動したときに生じるタイプ、そして原因が分からない特発性タイプの中枢型無呼吸も報告されています。
参考:
睡眠時に呼吸が止まる「中枢性睡眠時無呼吸」とは 心不全との関係性
中枢型睡眠時無呼吸の症状と治療法
中枢性睡眠時無呼吸症候群を放置すると…
中枢性睡眠時無呼吸症候群に気づかず治療が遅れてしまうと、恐ろしい合併症を引き起こすことがあります。
恐ろしい合併症を引き起こす
まず発症の可能性があるのが、高血圧です。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まって酸素が足りなくなるため、危険を察知した脳は体内の酸素濃度を上げようと心拍数を上げます。これにより、高血圧を発症するだけでなく、糖尿病や肥満、動脈硬化などを併発するリスクが高まります。
さらに、悪化すると心筋梗塞や狭心症、脳卒中など死亡率の高い合併症につながる恐れがあります。これらの疾患は、自覚がないままじわじわと悪化していくケースが多いので、異常に気づいたら速やかに医療機関を受診し、治療を受けることが大切です。
ですが、中枢性無呼吸は、閉塞性無呼吸のようにいびきをかかないため、無呼吸を起こしていることが本人のみならず周囲の人にも気づかれにくく、治療が遅れがちになります。では、どうすればいち早く中枢性無呼吸に気づき、早期発見につなげることができるのでしょうか?大切なのは、中枢性睡眠時無呼吸症候群を見極める重要なサインを見逃さないことです。
参考:
「いびき」が引き起こす病気とは?
SASとは
睡眠時に呼吸が止まる「中枢性睡眠時無呼吸」とは 心不全との関係性
中枢性睡眠時無呼吸症候群を見極める重要なサイン
中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症すると、「チェーンストークス呼吸」という特有の呼吸をするようになります。
チェーンストークス呼吸とは、無呼吸になる前に呼吸音が徐々に大きくなっていき、その後徐々に小さくなって最終的には止まってしまう、中枢性無呼吸に見られる特徴的な呼吸パターンをいいます。発生する原因は、血流の悪化によって呼吸中枢そのものに異常をきたし、呼吸量を調整できなくなるためだといわれており、医療機関でも中枢性無呼吸の診断時には必ず有無を確認されます。詳しい呼吸パターンは、次の通りです。
1.無呼吸になる前に、まず呼吸音がだんだんと小さくなっていく
2.小さい呼吸がしばらく続くと、今度は呼吸が徐々に大きくなっていく。このとき、胸やおなかも大きく動くのが確認できる
3.その後、呼吸は再び徐々に小さくなっていき、最終的には止まる
4.個人差はあるが、1〜3までの呼吸パターンをおよそ1分間から2分間程度継続する もし、家族やパートナーがこのような呼吸をしていることに気づいたら、すぐに医療機関を受診し、治療を受けることが大切です。
参考:
睡眠時に呼吸が止まる「中枢性睡眠時無呼吸」とは 心不全との関係性
どうやって診断するの?
では、どのようにして中枢性睡眠時無呼吸症候群を診断するのでしょうか?ここからは、医療機関で行われる検査法について解説していきます。
検査法
中枢性睡眠時無呼吸症候群の検査には、2段階あります。
まず1つ目が、自宅で行う検査です。この検査は、医療機関から貸し出されるパルスオキシメーターを手に装着し、睡眠中の酸素飽和度と脈拍を測定します。この検査で、呼吸が10秒間以上止まる無呼吸や、酸素飽和度が平常時よりも3~4%以上低下する低呼吸が、1時間あたり5回以上確認されると、無呼吸症状があると診断されます。 そして、さらに詳しく調べるために、2つ目の「終夜睡眠ポリグラフ検査」を行います。終夜睡眠ポリグラフ検査とは、自宅で行う簡易的な検査とは違って、医療機関に一泊して実施されます。また、簡易検査で測定した酸素濃度や脈拍に加えて、脳波や筋電図、呼吸の状態なども測定することで、より精密に睡眠の状態を知ることが可能です。無呼吸の出現やチェーンストークス呼吸などの異常が見られれば、中枢性睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
参考:
睡眠時に呼吸が止まる「中枢性睡眠時無呼吸」とは 心不全との関係性
睡眠時無呼吸症候群の治療法
検査の結果、中枢性睡眠時無呼吸症候群と診断されると、次は治療の段階に入ります。まず行われるのが、生活改善と薬物治療です。
生活改善と薬物治療
生活改善では、主に減塩や禁煙などによって、心臓への負担を減らしていく治療が実施されます。あわせて、禁酒や継続的な運動によって、睡眠の質の向上も行います。
薬物治療では、ACE阻害薬や利尿薬、β遮断薬などで血管を拡張させ、血圧を下げることで心臓への負担を減らします。また、心臓の働きを助ける強心薬のジギタリス製剤を使うこともあります。
CPAP(シーパップ)治療
生活改善や薬物治療でも改善しない場合は、CPAP(シーパップ)治療も行います。
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法:Continuous Positive Airway Pressure)とは、鼻に装着したマスクから持続的に空気を送ることで、寝ている間に無呼吸が起きないようにする治療法です。
本来は、気道の閉塞を伴う閉塞性無呼吸の治療で行われるものですが、中枢性無呼吸においても、酸素投与や呼吸の補助として実施されることがあります。
いびきメディカルクリニックについて
私たちいびきメディカルクリニックは、いびき・睡眠時無呼吸症候群の根本改善を目指す、専門治療クリニックです。これまで、たくさんの患者様が来院され、その効果を実感していただいています。
当院で行っているパルスサーミア治療は、喉粘膜にレーザーを照射していびきの原因となる気道の塞がりを軽減するオリジナルの治療法です。「喉の粘膜にレーザーを当てるなんて、なんだか怖そう…」と思われるかもしれませんが、心配はいりません。
パルスサーミア治療で使用するレーザーは、従来よりも痛みや出血、術後の不快感をできる限り少なくした特別なレーザーです。そのおかげで、これまでは手術から術後のダウンタイム終了まで数週間かかっていたものが、パルスサーミアの施術時間はわずか15分程度、ダウンタイムも3〜4日で済むようになりました。
こちらの記事で、当院で行っているパルスサーミア治療と従来の治療について、比較と解説を行っています。ぜひ、参考にしてみてください。
パルスサーミア治療について
当院での受診を検討されている方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。専門のスタッフが、治療のスケジュールや費用について詳しくご説明させていただきます。また、「どれくらい副作用があるんだろう?」、「ちゃんと治るのかな…?」など、お客様が不安に思われることにも、丁寧にお答えさせていただきますので、どうぞ遠慮なくおたずねください。 また、当院はお客様が納得した上で治療に臨んでいただくため、初回のカウンセリングは無料で行っています。当コラムの最後に、カウンセリングの予約フォーム(LINEもしくはWEBからの2種類をご用意)を設置しているので、ぜひそちらをご活用ください。
参考:
いびきの治療法|いびきメディカルクリニック
いびき治療の流れ|いびきメディカルクリニック
まとめ
今回は、いびきをかかない睡眠時無呼吸症候群について解説しました。
通常、睡眠時無呼吸症候群は気道の閉塞が原因で発生するため、大抵の場合はいびきを伴います。しかし、まれに脳の呼吸中枢の異常によって無呼吸が発生する、中枢性睡眠時無呼吸症候群が起こることがあります。
この中枢性無呼吸はいびきをかかないため、本人や周囲がなかなか気づけず、治療が遅れてしまうケースが多いです。そのため、異常を発見した場合には速やかに医療機関を受診し、医師の治療を受けることが、症状の改善につながります。
もし、「最近寝ても疲れが取れなくなった」、「日中に強い眠気を感じて仕事が手につかない」などの症状がある場合は、ぜひお近くの内科や呼吸器内科、睡眠外来などを受診するようにしてください。
【よくある質問】
Q.いびきを伴わない睡眠時無呼吸症候群はどんなものですか?
A.何らかの影響で脳の呼吸中枢がダメージを受け、睡眠中の呼吸の制御ができなくなると、中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。気道の閉塞を伴わないため、いびきをかかず、代わりにチェーンストークス呼吸という特徴的な呼吸パターンが見られます。
Q.いびきを伴わない睡眠時無呼吸症候群は、治療しなくても大丈夫ですか?
A.中枢性無呼吸を引き起こす呼吸中枢の異常は、心不全などの疾患が原因だといわれています。また、睡眠時無呼吸症候群は、死亡リスクの高い合併症につながる恐れがあるため、放置は厳禁です。異常を発見したら、速やかに医療機関を受診し、治療を受けるようにしましょう。