【睡眠中の唸り声】カタスレニアといびきの違いについて
目次
「寝ている最中に唸り声(うなり声)をあげてしまう」
そんな悩みを持っている方は、「カタスレニア」の疑いがあります。
カタスレニアとは睡眠障害の一種です。広く知られている病名ではないので、「命に関わるの?」「治療した方がいいの?」など、様々な不安を抱えている方が多いでしょう。
カタスレニアはそれほど害のない病気です。しかし、「いびき」が混ざっていた場合、適切な対処が必要になります。
そこで、この記事ではカタスレニアの原因や、いびきとの違いをまとめました。また、カタスレニア以外の睡眠障害についても、原因や治療方法、予防方法を解説しています。
唸り声をはじめとした睡眠に関する悩みをお持ちの方はぜひご覧ください。
カタスレニアとは?
カタスレニアとは、冒頭でもお伝えした通り睡眠障害の一種であり、就寝時に起こる「唸り声(うなり声)」のことを指します。基本的には自覚症状がなく、パートナーや家族に指摘され初めて気が付くという方が多いです。
このカタスレニアの声は比較的大きめなので、自分への影響よりも他人に対して影響を与えやすいとされています。自身のカタスレニアが原因で不眠症状などが現れることは稀ですが、同じ空間で眠っているパートナーや家族は、大きな唸り声で夜中に目が覚めてしまい不眠や寝不足に陥ることがあります。
カタスレニアは睡眠呼吸障害の1つ
睡眠障害には不眠症、過眠症、ナルコレプシーなどいくつもの種類があり、このうちカタスレニアは、「睡眠呼吸障害」に該当します。
睡眠呼吸障害とは、就寝中、呼吸に異常が見られる病気の総称です。カタスレニア以外には、大きないびきを伴う「睡眠時無呼吸症候群」もここに分類されます。
しかし、実際にカタスレニアを発症する方はごく僅か。睡眠呼吸障害と診断された患者さんのほとんどが睡眠時無呼吸症候群を患っているため、こちらが睡眠呼吸障害の代表的な病気とされています。
参考:
阪野勝久,2021/6/5,カタスレニアの特徴と対処法
睡眠障害の種類
カタスレニアの原因は不明
カタスレニアの原因は、残念ながら不明です。
研究の結果、入眠後2〜6時間後に唸り声が始まり短くて数秒、長くて数十秒続くこと、うめき声とともに心拍数や血圧が増減すること、脳の覚醒が起こることなどは判明しています。しかし、“なぜ起こる”のかについては未だ明らかにされていません。
参考:
阪野勝久,2021/6/5,カタスレニアの特徴と対処法
河野正己,いびきと睡眠関連うなり(カタスレニア)の違い
カタスレニアといびきの違い
カタスレニアは、いびきとともに発生することがあります。この2つはどちらも快適な睡眠を妨げる要因ではありますが、仕組みや発症による影響、治療方法などが異なります。
ここでは、カタスレニアといびきの違いを見ていきましょう。
仕組み
カタスレニアは、唸り声と言われることからも分かるように、文字通り“声”です。就寝中、息を吐く時間が長引くと、呼気の延長としてカン高い声や苦しそうな声、うめくような声が生じます。
一方でいびきは“声”ではなく“振動音”です。就寝中に息を吸い込んだ時、鼻から喉までの気道(上気道)にある組織が振動することでいびきが生じるのです。
さりげなくお伝えしたように、カタスレニアは主に息を吐く時、いびきは主に息を吸う時に起こるという違いもあります。
発症による影響
カタスレニアは、患者さん自身に対する悪影響がないと言われています。周囲への迷惑にはなりますが、自身が不眠になったり、その他何らかの病気に繋がったりすることは基本的にありません。しかし、後述する睡眠時無呼吸症候群を併発している可能性があるため注意が必要です。
一方でいびきは、一時的なものならばさほど影響はないですが習慣的なものの場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられ、健康や命に関わる恐れがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、就寝中に呼吸が止まったり呼吸量が少なくなったりする病気です。大きないびきを伴うのが特徴で、高血圧や糖尿病の合併症を引き起こすこともあるため、気が付いたらすぐに治療をする必要があります。
いびきによる身体への影響について、詳しくは下記のコラムを参考にしてください。
治療方法
現在のところ、カタスレニアの治療方法は確立されていません。パートナーや家族と別室で寝たり周囲の人が耳栓をつけたりと、できる範囲で対策を行います。しかし、前述の通りカタスレニア自体には危険性がないため、これらの対処法で大きな問題はありません。
いびきは、原因に合わせて生活習慣を改善し、治療をするのが一般的です。ただし、睡眠時無呼吸症候群によるいびきの場合は、CPAP治療、マウスピース治療、外科手術、レーザー治療など、医療機関での治療を受ける必要があります。この場合、適切な治療方法は症状の程度や原因によって異なるため、医師・専門医と相談し、決めることになります。
いびきの治療方法について、詳しくは下記のコラムを参考にしてください。
参考:
阪野勝久,2021/11/11, 睡眠障害とは
阪野勝久,2021/6/5,カタスレニアの特徴と対処法
河野正己, 2018/11/27,いびきと睡眠関連うなり(カタスレニア)の違い
いびき(睡眠時無呼吸症候群)に気が付いたら治療を検討
患者さん自身に影響がないカタスレニアに対し、いびきは場合によって、健康や命に関わる悪影響を及ぼします。カタスレニアと同時にいびきが起こっていることに気が付いたら、早めの治療を検討しましょう。
危険ないびきを見極める方法には、睡眠アプリなどを使って夜中に呼吸が止まったり、呼吸量が少なくなったりしていないかをチェックする方法があります。
また、睡眠時無呼吸症候群の症状としては、睡眠の質が低下したことに起因する日中の激しい眠気や、集中力の低下、倦怠感なども挙げられます。これらの症状も併せて起こっていたら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう。
睡眠時無呼吸症候群の症状と発見のポイントについて、詳しくは下記のコラムを参考にしてください。
カタスレニア以外の睡眠障害
ここからは、カタスレニア以外の睡眠障害について詳しく見ていきます。
カタスレニアには危険性がないとお伝えしましたが、本当に怖いのは、自分にも周囲にも影響が大きいその他の睡眠障害です。いったいどのような症状があるのか、チェックしていきましょう。
不眠
眠れない、寝つきが良くない、夜中に目が覚めるなどの症状を、総称して「不眠」と呼びます。
原因にはカフェイン・アルコールの摂取、喫煙といった生活習慣もあれば、ストレスという精神的なものもあります。さらに、病気やそれを治療する薬の副作用で不眠になることもあり、その原因は様々です。
不眠が続くと集中力や意欲の低下、倦怠感、食欲不振、めまい、抑うつなどの不調が現れるようになります。
日中の眠気
ナルコレプシーや特発性過眠症、睡眠不足などの睡眠障害により、日中に強い眠気を感じるようになります。症状がひどい場合は起きていられないこともあり、仕事や勉強、日常生活に多大な影響を及ぼします。
特にナルコレプシーは、日中に眠気を感じる睡眠障害の中でも代表的な病気です。10代の頃から発症することが多く、学校での居眠りがたびたび問題視されています。日中の眠気の他、感情の変化に伴い体の一部が脱力する、就寝中に金縛りが起こる、入眠時に幻覚を見るなどの症状が出ることもあります。
睡眠リズムの問題
人よりも体内時計が遅れている「睡眠相後退症候群」によって睡眠リズムが狂ってしまうと、睡眠リズムの問題が起こります。具体的な症状としては、夜に眠れない、朝に起きられない、反対に朝早く目覚めてしまうなどです。
原因は生活リズムにある場合が多く、夜遅くまで趣味に没頭している、アルバイトをしているなどで、体内時計が遅れてしまうと睡眠リズムが狂ってしまいます。
特に、スマートフォンやゲームの画面からは「ブルーライト」という強い光が発生しているので、夜遅くにスマホを操作したりゲームをプレイしていたりすると、体内時計が狂いやすいです
異常行動
就寝中に変わった行動をとる症状で、レム睡眠行動障害や夢遊病、夜驚症、頭内爆発音症候群などが含まれます。具体的な症状としては、夢の内容に反応して寝言を言う、叫ぶ、ベッドや布団を離れて歩き回る、悲鳴のような声を挙げるなどがあります。
レム睡眠行動障害は、夢遊病、夜驚症は原因が明らかになっていて、主に発症する人も判明していますが、頭内爆発音症候群に関しては原因が判明していません。
運動障害
身体に何らかの異常が起こる症状で、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害などがあります。
むずむず脚症候群は就寝時に脚がじっとしていられず不眠となってしまう病気です。周期性四肢運動障害は就寝時に脚がピクッと周期的に動き、目が覚めてしまったり熟睡できなかったりする病気です。
参考:
阪野勝久,2021/11/11, 睡眠障害とは
三島 和夫, 2023/01/23,不眠症
睡眠障害の原因
では、なぜ睡眠障害が起こるのでしょうか?病気によって原因は異なりますが、ここでは多くの病気に共通する主なものを挙げていきます。
生活リズムの乱れ
通常は眠る時間帯である夜中に活動することで、生活リズムが乱れると睡眠障害が起こりやすくなります。
特にライフスタイルが多様化している現代では、仕事や趣味で夜遅くに活動する方が増えています。その結果、生活リズムが乱れる方が増加し、昔よりも睡眠障害が問題視されるようになりました。
ストレス
ストレスもまた睡眠障害を引き起こす原因です。
こちらも現代になってより顕著になった原因と言えます。SNSの普及により他人とコミュニケーションをとる機会が増えたことで、人間関係のストレスを感じやすくなっており、結果として睡眠障害に悩む方の増加に繋がりました。
肥満
肥満は睡眠障害の中でも、睡眠呼吸障害に該当する睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因です。顔まわりの脂肪によって気道が圧迫され、いびきをかいたり、呼吸が止まったりします。
前述した通り、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病の合併症を引き起こす恐れがあるため、とても危険です。食生活を見直したり運動をしたりすることで、肥満の解消に努めましょう。
加齢
高齢になると眠りが浅くなる、夜中に目が覚めやすくなる、睡眠時間が短くなるなどの変化が起こります。こうした変化が、睡眠障害を招くことがあります。
また、高齢者に多い認知症が原因で不眠やレム睡眠行動障害のような睡眠障害が起こることも。歳をとってから睡眠の変化に気が付いたら、睡眠障害の可能性を疑いましょう。
睡眠障害の治療方法
多くの睡眠障害は、適切な治療を受けることで改善することが可能です。
ここでは、睡眠障害の主な治療方法を紹介します。ただし、実際に適した治療方法は症状や原因によって異なるので、医師・専門医と相談の上、治療方法を決めてください。
また、カタスレニアのように治療方法がない病気も存在します。いずれにしても、睡眠障害が疑われたらまずは医療機関を受診し、詳しく検査をしてもらった上で対処法を考えましょう。
生活習慣の改善
治療とは少々異なるものの、基本的には生活習慣を改善することが、睡眠障害の症状緩和に繋がります。
例えば、肥満が原因と思われる睡眠時無呼吸症候群であれば、減量によって症状を緩和できる可能性があります。
また、アルコールやカフェインの摂取や喫煙なども、睡眠障害を引き起こす原因です。過剰な摂取・喫煙をしてしまっている方は、控えることで睡眠障害改善の一歩となるでしょう。
薬の服用
睡眠障害の方が医療機関を受診すると、症状に応じて薬を処方されます。
不眠であれば睡眠薬、ナルコレプシーであれば中枢神経刺劇薬、レム睡眠行動障害であれば抗てんかん薬、むずむず脚症候群であればドパミンアゴニスト、睡眠リズム障害であればメラトニンアゴニストを処方されるケースが多いです。
これらの薬を服用することで、睡眠障害を治療できます。
CPAP(シーパップ)治療
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療方法です。専用の機械を装着し、鼻から空気を送り込むことで気道を広げ、呼吸をスムーズにします。
ほとんどの睡眠時無呼吸症候群の治療に効果的であること、治療の際に健康保険が適用されることから、多くの患者さんがこちらの治療を受けています。
マウスピース治療
骨格が問題で睡眠時無呼吸症候群を発症している方には、マウスピース治療が勧められることがあります。就寝中、歯にマウスピースを装着し、顎の位置を調整することで気道を広げる方法です。
マウスピースの種類によっては健康保険が適用されない点には注意が必要です。
外科治療
こちらも主に睡眠時無呼吸症候群に対して施される治療で、骨格に問題がある場合や、扁桃肥大がある場合に適しています。治療費用は高額ですが、根本治療を目指せるのがメリットです。
睡眠障害の予防方法
最後に、そもそも睡眠障害にならないための予防方法をご紹介します。
睡眠障害を発症すると治療にお金がかかりますし、睡眠時無呼吸症候群であれば健康を損なう危険性もあります。日頃から予防を心がけましょう。
ただし、カタスレニアのように原因が不明の睡眠時無呼吸症候群に関しては、予防することができません。少しでも早く気が付いて、医療機関を受診することが大切です。
減量する
肥満気味の方は、食生活を見直したり運動を習慣化したりすることで減量しましょう。
肥満が原因となる代表的な病気は睡眠時無呼吸症候群です。減量することで気道が塞がるリスクが減り、睡眠時無呼吸症候群の予防に繋がります。
ストレスを解消する
不眠や睡眠時無呼吸症候群など、ストレスによって起こる病気の予防方法です。
日常生活の中には仕事や人間関係など、様々なストレスの原因があります。まずはストレスの原因を把握し、それを断つことが大切です。
また、趣味の時間を設けることや適度に体を動かすことなども、ストレス解消に効果があります。
規則正しい生活を送る
睡眠時間が短い、就寝時間が遅いなど、生活リズムが乱れている方は、規則正しい生活を送るように心がけましょう。しっかりと睡眠をとることで、睡眠障害のリスクを低減できます。
カフェイン、アルコールの摂取を控える
過度なカフェインやアルコールの摂取は、不眠や睡眠時無呼吸症候群などを引き起こします。特に、毎日のように過剰摂取している方は注意が必要です。
カフェインやアルコールは、飲み過ぎないように量を決めて、また夜遅くに飲まないようにしましょう。
まとめ
この記事では、カタスレニアの原因やいびきとの違い、カタスレニア以外の睡眠障害の原因、治療方法、予防方法などを解説しました。
カタスレニアは発症の原因が分からず、治療方法も確立されていませんが、周囲に迷惑がかかる以外の影響がないので、比較的対処しやすい睡眠障害です。
注意が必要なのは、カタスレニア以外の睡眠障害。特に大きないびきを伴う睡眠時無呼吸症候群は、病気のリスクを高めるため、気が付いたら早めに治療することが勧められます。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法としてはCPAP(シーパップ)治療が代表的ですが、いびきメディカルクリニックでは当院のオリジナルのレーザー治療「パルスサーミア」をお勧めしています。外科手術と同様、睡眠時無呼吸症候群の根本的な治療が可能でありながら、身体への負担や痛みが少ない治療方法です。
いびきにお悩みの方は、ぜひ一度いびきメディカルクリニックへご相談ください。
【よくある質問】
Q.カタスレニアとは何ですか。
A.カタスレニアは睡眠障害の一種であり、就寝中に発する唸り声のことです。原因が判明しておらず、治療方法も確立されていませんが、周囲への迷惑になる以外、影響はありません。しかし、いびきを伴う病気「睡眠時無呼吸症候群」が潜んでいる可能性には注意が必要です。
Q.カタスレニアはどんな音ですか?
A.カタスレニアの音は人によって様々です。入眠後2〜6時間後にカン高い声、苦しそうな声、うめくような声が生じます。また、呼気の延長として発せられるため、息を吸いこんだ後に音が出るのも特徴です。