いびきと脳梗塞はどんな関係があるのか?身体におよぼす影響と併せて解説
目次
脳梗塞は、発症後すぐに適切な処置を行わないと、命に関わる可能性がある疾患です。脳梗塞といびきが関係していると聞くと、意外と思われるかもしれませんが、実は双方は大きく関係しているのです。脳梗塞の症状や、いびきとの関係性について、今回の記事で理解を深めていただけますと幸いです。
脳梗塞とはどのような疾患なのか?
脳梗塞という病名はよく耳にするが、詳しい症状が分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。最初に、脳梗塞がどのような疾患なのか、解説します。
脳の血管が詰まり、脳細胞が死んでしまう
脳梗塞は、脳卒中(脳血管障害)のひとつであり、脳卒中は次の3タイプに分けることができます。
・脳梗塞…脳の血管が詰まる
・脳出血…脳内を通っている細い血管が破れ、出血する
・くも膜下出血…くも膜という脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔)にある血管が破裂して出血する
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞へ酸素や栄養が送られなくなり、脳細胞が死んでしまうものです。脳梗塞の症状をさらに分類すると、次の3つが挙げられます。
・ラクナ梗塞…細い血管が塞がることで発症する
・アテローム血栓性脳梗塞…アテローム(コレステロールなどの固まり)により脳内の太い血管が塞がることで発症する
・心原性脳塞栓…不整脈などが原因で心臓にできた血栓が脳に到達し、血管が詰まることで発症する
前触れがある場合もあれば、突然発症する場合もある
脳梗塞は、症状が起きる前触れがある場合もありますが、前触れなく突然発症するケースも多い疾患です。前触れとして見られる症状は、主に次のようなものがあります。
・運動障害…傾けながら歩いている、体の左右どちらかが力が入らないなど
・感覚障害…左右どちらかの手や足などがしびれる、感覚が鈍くなるなど
・言語障害…ろれつが回らない、うまく話せないなど
これらの症状が見られたら、すぐに専門医を受診しましょう。
症状が一過性であっても油断は禁物
脳梗塞と同じ症状が一時的に現れても、しばらくすると症状が治まる場合があります。これは、脳梗塞が治ったのではなく、血栓が脳内で一時的に詰まる「一過性脳虚血発作」という症状の可能性が高いのです。
この発作を起こした人の3割から4割は、その後に脳梗塞を発症することが分かっています。特に、発作後1日から2日の間が危険ですので、油断は禁物です。
脳梗塞(脳卒中)になりやすい人の特徴
脳梗塞(脳卒中)になりやすい人には、次のような特徴があります。
・生活習慣病を患っている人
・過労気味の人
・動脈硬化と診断されている人
・高齢者
・塩分過多、カロリー過多の食生活している人
・過度な飲酒をしている人
生活習慣病とは、高血圧症や糖尿病のことです。これらの病気やストレス、過労は、脳梗塞の発症リスクを高めます。
また、動脈硬化の人や高齢者は、血管が破けたり、詰まったりしやすくなることから、こちらも脳梗塞になりやすいです。
さらに、現在の健康状態や年齢に関係なく、食生活や飲酒の習慣次第では、脳梗塞の発症リスクを高めます。日頃から塩分の多い食事、カロリーの高い食事、過度な飲酒にはご注意ください。
参考:
2022/03/09,脳卒中が潜む「危険ないびき」のサインを見抜こう!
いびきが脳梗塞の原因になるのか?
脳梗塞について詳しく解説してきましたが、いびきが脳梗塞の原因になる可能性はあるのでしょうか。
脳内の酸素不足が起こり、リスクが高まる
いびきをかいている状態では、空気の通り道である気道が狭くなっているため、全身が酸素不足の状態に陥っています。脳内に取り込める酸素量も減り、脳が酸素不足を起こすと、血管と血液が接している内皮細胞が機能障害を起こし、脳梗塞を発症するリスクが高まるのです。
睡眠中の呼吸が正常とは異なり、必要な酸素を体内に取り込めない症状を、「睡眠呼吸障害」と言います。睡眠呼吸障害の代表的な疾患が睡眠時無呼吸症候群であり、脳梗塞以外にも様々な疾患の発症要因になります。
脳梗塞と脳出血は区別がつきにくい
脳出血と脳梗塞は、症状が非常によく似ているため、専門医による精密検査を行うまでは見分けるのが大変困難です。発症後に、歩けない・上手に話せない・体に麻痺やしびれが生じる・視野が欠けるなどの症状が見られます。くも膜下出血では、バットで殴られたような激しい頭痛が突然起こるのが大きな特徴です。
脳梗塞が起きるとどのようないびきが起こるのか?
次のようないびきをかいている場合は、脳梗塞を発症している可能性があるため、早急に対処しなくてはいけません。
いつも以上に大きないびきが起こる
脳梗塞を発症すると、身体の運動機能に麻痺が生じます。これによって筋弛緩が起こり、舌根沈下につながります。その結果、いつも以上に大きないびきが起こるケースがあるのです。
寝ている本人は、自分自身のいびきには気づかないため、家族やパートナーなど周囲の人たちが気づくことが大切です。
チェーン・ストークス呼吸が起こる
チェーン・ストークス呼吸とは、呼吸が徐々に大きくなった後、徐々に小さくなり、最も減弱した時に呼吸が10秒から20秒ほど止まります。その後、呼吸を再開しますが、同じように呼吸が大きくなったり止まったりするのを繰り返す症状です。1回の周期は、30秒から2分程度とされています。
この症状は、中枢神経系が障害を受けて起こるものであり、呼吸中枢の働きが弱まったり脳が低酸素状態に陥ったりした場合に見られます。
起こしても目覚めず、止まらない
脳梗塞の可能性が高いいびきの特徴としては、起こそうとして声をかけたり、揺らしたりしても止まらない…つまり、なかなか目覚めないことも挙げられます。
起こしても目覚めない状況の時、呼吸さえ確認できれば「よく寝ている」だけで済ませてしまいがちですが、脳梗塞による意識障害を起こしている可能性も否めません。
呼吸に異常がなくても、何らかの刺激を与えて目覚めない、もしくは反応がおかしいと感じたら、脳梗塞を疑ってください。
体全体、または一部が痙攣する
脳梗塞を発症している時は、いびきに加えて、体全体が痙攣する、または体の一部が痙攣することがあります。これは、脳梗塞によって脳組織中の神経細胞が活性化し、てんかんを引き起こすためです。
体全体の痙攣、または体の一部の痙攣が起こっている場合、寝ているように見えても、実は脳梗塞による意識障害を起こしている可能性が考えられます。
家族やパートナーが上記のような状態に陥っている時は、決して放置せず、すぐに病院の救急外来などへ相談しましょう。
参考:
2022.12.07, 危険ないびきは放置厳禁!命に関わる危険ないびきを知って自分と家族を守る
2017/12/18,よくわかる脳卒中のお話・・・その14
早急に医師の診察が必要
脳梗塞を発症したときは、救急車を呼ぶなどして、早急に医師の診察を受けなくてはなりません。時間が経過すると症状が進行し、重症化してしまう恐れもあります。治療開始が早いほど治療効果が高まり、後遺症を減らすことにもつながるのです。
脳梗塞の原因に?睡眠時無呼吸症候群によるいびきの特徴
これまで、脳梗塞が起きている場合のいびきの特徴についてお話ししてきました。「自分は当てはまらない」と胸を撫で下ろした方もいるでしょう。
しかし、まだ安心はできません。危険ないびきには、脳梗塞によるものの他に、睡眠時無呼吸症候群によるものもあります。睡眠時無呼吸症候群は脳梗塞の原因にもなる睡眠呼吸障害。次のような特徴のいびきがあった場合も、できるだけ早めの対処が必要です。
時々呼吸が止まる
睡眠時無呼吸症候群に起因するいびきの特徴としては、時々呼吸が止まることが挙げられます。これは睡眠時無呼吸症候群のメカニズムによるもので、気道が塞がることから起こる、睡眠時無呼吸症候群のいびきならではの特徴です。
呼吸が止まっている時間(無呼吸の時間)は、約数秒から数十秒程度です。数秒から数十秒が経過したら、多くの場合、苦しくなって目を覚ますか、あるいは再び大きないびきを始めます。
いずれにしても就寝中、急に止まるいびきには注意が必要です。
慢性的ないびきが朝まで続く
通常、いびきは就寝中、一時的に起こることがほとんどです。また、続く時間も短時間となっています。
しかし、睡眠時無呼吸症候群のいびきは一晩中続くことが大半です。いびきが長時間続くと、全身が酸素不足の状態に陥りやすくなることから、通常のいびきに比べて危険性が増します。
また、酸素不足によるストレスが大きくなれば、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こすことも。夜寝てから朝起きるまで、いびきが一晩中続くようであれば、睡眠時無呼吸症候群を疑い、早めに医療機関へと相談してください。
日中の眠気や倦怠感に要注意
睡眠時無呼吸症候群に関しては、日中の眠気や倦怠感にも注意が必要です。なぜなら、睡眠時無呼吸症候群を発症している場合の症状の1つに、日中の眠気や倦怠感があるためです。
睡眠時無呼吸症候群を発症していると、全身が酸素不足の状態に陥りやすく、睡眠の質が下がります。満足な睡眠がとれないことから、睡眠不足による日中の眠気や倦怠感に繋がるのです。
特に日中の眠気は危険度が高く、運転ミスをはじめとした事故を引き起こしやすくなるため、命に関わる可能性が考えられます。
危険でないいびきと危険ないびきの見分け方とは?
脳梗塞が原因によるいびき以外にも、危険ないびきがいくつか存在します。危険でないいびきと見分けるには、どのような点に着目すると良いのでしょうか。
危険でないいびきとは
危険でないいびきは、日中に強い疲労を感じたり、風邪を引いて鼻が詰まったり、お酒を飲んだりした日の夜に起こるいびきです。これらの原因で起こるいびきを「単純性いびき」と言い、いびきをかいても熟睡できていて、起床時のだるさや日中の眠気などの自覚症状はほぼ伴いません。体内に酸素が十分取り込まれており、無呼吸の症状も見られないのが特徴です。
危険ないびきとは
危険ないびきに含まれるのは、先に挙げたような脳梗塞が疑われるいびきの症状の他にも、上気道抵抗症候群や睡眠時無呼吸症候群などが原因となるいびきがあります。
上気道抵抗症候群は、単純性いびきが悪化したもので、睡眠時無呼吸症候群の軽症型と言われることもあります。低呼吸や無呼吸の症状は見られませんが、上気道が狭くなることから睡眠中の呼吸力が強くなり、熟睡できなくなるため、昼間の眠気を伴う点が大きな違いです。
睡眠時無呼吸症候群は、習慣的ないびきにより低呼吸や無呼吸の症状を招き、体に酸素を十分取り入れることができなくなります。放置してしまうと、脳梗塞をはじめとした生活習慣病を発症する原因ともなりますので、早い段階での治療が必要です。
脳梗塞に関連が深い睡眠時無呼吸症候群について
記事内で何度かお話ししてきたように、脳梗塞に関連性が深い病気の1つに「睡眠時無呼吸症候群」があります。
しかし、睡眠時無呼吸症候群について詳しく知らないという方も多いはず。そこで最後に、睡眠時無呼吸症候群について、以下のような内容を解説していきます。
・メカニズム
・症状
・原因
・予防方法
睡眠時無呼吸症候群にも注意を払って起きたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
メカニズム
まずは、睡眠時無呼吸症候群が起こるメカニズムを見ていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群は、多くの場合、空気の通り道である気道が狭くなったり、塞がれたりすることで起こります。私たちの体は、取り込んだ空気が気道を通り、体内に入るようにできています。しかし、睡眠時無呼吸症候群は、この空気の取り込みが上手くできず、就寝中に全身の酸素不足などを引き起こします。
このように、気道が狭くなる、あるいは塞がることによる睡眠時無呼吸症候群を「閉塞性睡眠無呼吸タイプ」と言います。
もう1つ、睡眠時無呼吸症候群には「中枢性睡眠無呼吸タイプ」があり、主に中枢性の異常が原因で起こります。
中枢性睡眠無呼吸タイプの睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性睡眠無呼吸タイプに比べて発症する人が少なく、研究があまり進んでいません。
症状
睡眠時無呼吸症候群の症状には、次のようなものがあります。
・大きないびきをかく
・夜中に目が覚める
・熟睡感を得られない
・疲れがとれない
・日中に強い眠気を感じる
・全身の倦怠感を感じる
・集中力や記憶力の低下
・性欲の減退
以上に挙げた症状のうち、大きないびきは気道が狭まったり、塞がったりすることで起こります。そして、全身が酸素不足に陥った結果、睡眠の質が低下し、その他の症状へと繋がります。
さらに、常に眠気や疲労感、倦怠感などがあることから、気分が落ち込みがちになり、うつ病へ進展する可能性もあるため、決して放置できません。
睡眠時無呼吸症候群の症状について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状は?大きないびきと無呼吸を繰り返す
原因
睡眠時無呼吸症候群の原因は大きく4つに分けられます。
・肥満
・骨格の問題
・睡眠中の姿勢
・中枢性の異常
もっとも多い原因は肥満です。首周りの脂肪が気道を狭める、あるいは塞ぐことから、睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。骨格に関しては、日本人に多い下あごが小さい方や、扁桃腺が大きな方が、睡眠時無呼吸症候群になりやすいと判明しています。
肥満や骨格の問題がなくても、睡眠中に仰向けに寝る方は、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高いです。これは、舌の根が喉の奥に落ちやすく、気道の閉塞に繋がるためです。
中枢性の異常については、詳細が明らかになっていません。何らかの原因で脳が「呼吸をしなさい」という指令を出さなくなり、無呼吸が起こります。
睡眠時無呼吸症候群の原因について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群の原因は4つ!症状を判断・予防する方法
予防方法
睡眠時無呼吸症候群の予防に向けて、まず実践していただきたいのは、体重を減らすことです。
前述した通り、睡眠時無呼吸症候群の多くは肥満が原因で起こるため、肥満体型の方は体重を減らすことで、発症のリスクを低減できます。体型に問題がない方は、肥満体型にならないような食生活や運動習慣を心がけましょう。
また、過度なアルコールの摂取を控えることも、睡眠時無呼吸症候群の予防に効果的です。
アルコールは筋肉を弛緩させるため、就寝時、舌の根が喉奥へと落ちやすくなります。結果、気道が閉塞して睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高まるのです。日常的にお酒を嗜む方は、飲酒量にご注意ください。
就寝時の姿勢にも注意しましょう。できるだけ横向きに寝ることで、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを抑えられます。横向きで寝づらい場合は、自身の体型に合った枕へ変えることを検討してください。
睡眠時無呼吸症候群の予防方法について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
睡眠時無呼吸症候群の原因は4つ!症状を判断・予防する方法
参考:
2021/04/15,睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン
脳梗塞を防ぐ方法のひとつがいびきの改善
今回は、いびきと脳梗塞の関係について解説してきました。脳梗塞は、いびきが原因で引き起こされる可能性もあるため、脳梗塞を防ぐには、いびきの改善を行うのも有効な手段のひとつです。
いびきの症状を改善したい方は、ぜひ一度いびきメディカルクリニックまでご相談ください。当院で行っている治療法「パルスサーミア」は、当院オリジナルの最新レーザー治療です。これまでのレーザー治療とは異なり、「切らないびき治療」として多くの患者様がお持ちのいびきの悩みを解消できます。1回の治療時間はおよそ15分で、お仕事の合間の時間を使って治療ができますので、仕事に支障が出ることもありません。
いびきメディカルクリニックは、銀座院、立川院、新宿院を構えており、両院とも駅から徒歩圏内で通いやすいことが大きなメリットです。いびきの改善を考えておられる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
【よくある質問】
Q.脳梗塞に前兆はありますか?
A.脳梗塞は、前兆として運動障害、感覚障害、言語障害などの障害が発生するケースがあります。これらの障害が起こったら、すぐに専門医へ相談しましょう。また、特徴的ないびきにより、脳梗塞が発覚することもあります。
Q.脳梗塞のいびきの特徴はなんですか?
A.脳梗塞のいびきは、通常のいびきよりも大きいことが特徴です。これは運動機能に麻痺が生じ、舌の根が気道を塞ぐことが原因とされています。また、呼吸の大きさが徐々に変化したり、呼吸が止まったりする「チェーン・ストークス呼吸」が起こるのも特徴です。こちらは中枢神経系が障害を受けることで起こります。